骨盤帯・股関節の臨床評価まとめ②〜仙腸関節を制動する筋肉および靭帯、股関節外旋筋群の機能解剖学〜

仙腸関節を制動する筋肉および靭帯

仙腸関節の運動を制御する筋肉および靱帯について以下に整理します。

・ニューテーションを制御する筋肉および靭帯(図1)


図1 ニューテーションを制御する筋肉および靭帯

ニューテーションを制御する筋肉および靱帯
・仙結節靭帯
・仙棘靭帯
・前仙腸靭帯(前上方繊維束、前下方繊維束)
・大腿二頭筋

仙結節靱帯¹⁾²⁾
上後腸骨棘後仙腸靱帯から付着し、坐骨結節の内側縁まで続きます。繊維は3部に分かれ、外側帯は上後腸骨棘ー坐骨結節、内側帯は尾骨ー坐骨結節、上方帯は上後腸骨棘ー尾骨を結びます。大腿二頭筋長頭腱(図2)、大殿筋、多裂筋、梨状筋と直接付着しています。仙骨のニューテーションを制動(タイトネスでニューテーションを制限)します。

図2 仙結節靭帯と大腿二頭筋腱との連続性

<仙結節靭帯の触診(図3)>
仙結節靭帯は坐骨結節の内側かつ頭側で触れることができます。深く指を潜り込ませてバンド状の繊維を触知します(緊張が高いとコリコリします)。上方に辿っていことで尾骨外側までの連続性を確認することができます。

図3 仙結節靭帯の触診
著作者:Racool_studio/出典:Freepik

🎥仙結節靭帯の触診動画(セルフ確認用)

https://www.youtube.com/watch?v=rYfaZ9SAqK0

✍️仙結節靭帯の触診を用いた臨床応用の例

仙結節靭帯の触診は、仙腸関節のニューテーションを制限する因子を評価するのに役立ちます。例えば、ニューテーションの徒手誘導が有効な(疼痛が減る)仙腸関節性腰痛に対して、仙結節靭帯のタイトネスがないか、連結する梨状筋や大殿筋および大腿二頭筋の過緊張がないかをチェックしていくことで問題点をより詳細に抽出していくことができます。


仙棘靱帯
¹⁾²⁾³⁾
仙骨と尾骨の外側面から坐骨棘に付着します。薄い三角形状であり、仙結節靱帯とともに仙骨のニューテーションを制動する役割があります。

前仙腸靱帯²⁾
仙骨翼と仙骨前面から腸骨前面に縦に長く、横断方向に走行して付着します。仙腸関節前面の離開を制動し安定性に寄与しています。

・カウンターニューテーションを制御する筋肉および靭帯(図4)


図4 カウンターニューテーションを制御する筋肉および靭帯

カウンターニューテーションを制御する筋肉および靭帯
・長後仙腸靭帯

カウンターニューテーションを唯一制動することがわかっているのが長後仙腸靭帯です。侵害受容器が豊富にあり、PSISの直下で圧痛所見がみられやすいです。

股関節外旋筋群の機能解剖学

股関節の外旋作用を持つ筋肉には、以下が挙げられています。

【股関節外旋作用を持つ筋肉一覧(寄与率)】⁴⁾
大殿筋(29.9%)

中殿筋後部線維(28.8%)
内閉鎖筋(16.0%)
大腿方形筋(9.8%)
梨状筋(5.0%)
大腿二頭筋(3.2%)
下双子筋(2.7%)
上双子筋(2.5%)
小殿部筋後部線維(2.0%)
外閉鎖筋
(股関節外旋作用の大きい順に記載)

大殿筋(図5)

図5 大殿筋

【大殿筋の解剖】⁵⁾
起始:仙骨後面の側方、腸骨の殿筋面の後方、胸腰筋膜と仙結節靭帯
停止:上部繊維⇨腸脛靭帯、下部繊維⇨殿筋粗面
支配神経:下殿神経(L5〜S2)

大殿筋最も強力な股関節伸展および外旋筋で、上部繊維と下部繊維に分けられます。

大殿筋の上部繊維は、主に外転作用を有し、腸脛靭帯に停止します(図6)。
大殿筋の下部繊維は、内転作用を有し、大転子の後下方にある殿筋粗面に停止します(図6)。

図6 大殿筋の上部繊維および下部繊維と作用

ただし、上部下部繊維ともに股関節内転運動よりも外転運動で筋活動が高い⁴⁾⁶⁾と報告されています(図7)。

図7 大殿筋の作用方向
6)より画像引用

歩行においては、大殿筋の下部繊維が踵接地の直前に先行して活動し、足底接地前に筋活動のピークを迎えます。一方で、大殿筋上部線維は踵接地後より活動しはじ め、立脚中期あたりで筋活動が最大となり、その後の踵離地に向けて漸減していきます⁷⁾⁸⁾(図8、9)。大殿筋の上部繊維は中殿筋とともに股関節外転作用によって骨盤の対側下制を制動していると考えられています。


図8 歩行における大殿筋下部繊維および上部繊維の筋活動パターン


図9 歩行周期における股関節のモーメントと筋活動
8)より画像引用

内閉鎖筋(図10)

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