膝関節伸展の制限因子とは~評価と治療の実際~

 

『膝が伸びない』

整形をみるなら鉄板フレーズです。

例えば、高齢者の多くは膝が曲がっており、隣接する足関節や股関節、骨盤のアライメントに相互に悪影響を及ぼしている所見を臨床上多く経験します。

 

理学療法士には膝が伸びない(伸展制限)原因を評価し、アプローチする役割が求められます。

今回は、膝関節伸展制限の分類および制限因子、さらに臨床における評価方法と治療介入についてまとめていきます。

 

膝関節伸展制限の要因

橋本らは膝関節伸展制限の要因を主に次の3つに分類1)しています。

・膝関節の後方および側方支持組織の癒着や短縮に起因したもの

・半月板を含めた前方支持組織のインピンジメントに起因したもの

・関節内圧ならびに筋内圧の上昇に伴う疼痛を起因したもの

 

これらから言えることは、

膝関節伸展制限だからといって後方の組織だけに目を向けるのではなく、

膝関節の前方および側方、そして関節内にもその原因は隠れている

といった認識を持つおくことが大切になります。

 

膝関節伸展を制限する組織

では実際に、膝関節伸展を制限する組織には一体何があるのか、について以下をご参照ください。

 

膝関節伸展を制限する組織一覧

 

理学療法士はこれらたくさんある中から、制限組織の特定をします。

制限組織の特定には、まず第一に、確実にその組織に触れる(触り分けられる)触診技術が求められます

 

膝関節伸展の制限因子となりやすい筋肉の触診方法

以下に、膝関節伸展の制限因子となりやすい筋肉(半腱様筋、半膜様筋、膝窩筋)の触診方法を一部ご紹介します。

 

膝関節伸展制限に対するアプローチ方法

各組織の伸張性滑走性、筋肉であればスパズムを起こしていないかを評価した後、膝関節伸展制限の原因と考えられる組織に対しアプローチを行います。


アプローチ方法には様々ありますが、問題点に応じて、

・徒手的操作や筋肉の反復収縮によって組織間の滑走性を促す
・ストレッチングによって伸張性を向上させる
・Ib抑制や相反抑制を利用して筋スパズムを改善する

といった介入が一般に多く行われます。

 

アプローチ後には、必ず可動域を再評価し、

可動域の改善が得られてはじめて、原因はその組織だったのだと解釈することができます(これを治療的評価とも言います)

多くの理学療法士がこの治療的評価を行いながら、リハビリを進めています。
(たった一回の評価で原因はこれだ!と決めつけることはまず不可能です。)

 

いかがでしょうか?

今回は、膝関節伸展制限を例に評価や治療の流れをご紹介しましたが、その他の関節や部位に対するアプローチでも共通する、理学療法士にとって大事な部分になります。

情報は随時更新していきます。

 

参考・引用文献
1)林典雄,他:膝関節拘縮の評価と運動療法.株式会社 運動と医学の出版社,2020.
2)林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹 改訂第2版.株式会社メディカルビュー社,2012.
3)工藤慎太郎:機能解剖と触診.株式会社羊土社,2019.
4)坂井建雄,他監訳:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版,株式会社医学書院,2017.

 

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