膝関節の選択的アプローチ

膝関節運動時痛に対する選択的アプローチ

膝蓋下脂肪体の評価アプローチ

【膝蓋下脂肪体の解剖と役割】
膝蓋下脂肪体(Infrapatellar Fat Pad:以下IFP、(図1))
は、膝蓋靱帯の裏側に存在する脂肪組織で、大腿神経、閉鎖神経、坐骨神経など豊富な神経支配を受ける¹⁾とされています。

図1 IFP
2)より画像引用

山田³⁾は、膝蓋下脂肪体は膝OAで最も痛みを発しやすい組織であり、伸展制限の主要因位もなりやすい組織でもあると述べています。
Dyeの疼痛閾値マップ⁴⁾においても、膝蓋下脂肪体は4A(とても痛い)に分類されています。

IFPの役割について、大腿四頭筋腱の顆部接触や膝蓋大腿関節の圧緩衝に作用する⁵⁾とされています。外力に対するクッションの役割のほかに、①表面をおおう滑膜による関節液の分泌あるい潤滑作用、②関節軟骨面の清掃、③摩擦や刺激に対する防御機構が挙げられています⁶⁾。

解剖体では、膝蓋骨尖と半月板前節を連結する微細なIFPの繊維が観察されています(図2)。

図2 膝蓋骨尖と半月板前節を連結する微細なIFPの繊維
6)より画像引用

【膝関節屈曲角度とIFP内圧の関係⁷
IFPは、膝関節屈曲20°未満および100°以上で膝関節伸展モーメントを生じさせると内圧が大幅に増加すると報告されています(図3)。また、膝関節完全伸展位(膝関節屈曲平均1.5°)で最も圧力が高まったとされています。

図3 膝関節屈曲角度とIFP内圧の関係
7)より画像引用一部日本語追記

しゃがみ込み動作時に膝前部痛が残存する膝は、健側に比べてIFPの弾性値(硬さ)が有意に高値であった⁸⁾と報告されています。

【膝関節屈伸運動に伴うIFPの動態】
IFPは、膝関節伸展位では膝蓋骨の下方で体表面近くを広範囲に位置しています(図4)。

図4 MRI像による左膝完全伸展位のIFP(紫色)
9)より画像引用

IFPは、膝伸展位では膝蓋骨とともに引き上げられ、膝関節屈曲に伴い関節内に入り込むように移動します⁶⁾¹⁰⁾¹¹⁾(図5)。

図5 膝関節屈曲0°および30°のIFP(青色)
12)より画像引用

深屈曲位におけるIFPは、膝蓋靱帯により前方から、ACLとPCLにより後方から押し出され、膝蓋骨の裏面に入り込むことで膝蓋大腿関節の除圧機構に寄与している⁵⁾とされています(図6)。

図6 MRI像による膝関節屈曲120°位のIFP(紫色)
9)より画像引用

変形性膝関節症患者のIFPは若年健常者と比較して、膝関節伸展時の前方移動が少ない¹³⁾と報告されています(図7、8)。

図7 膝関節伸展中(屈曲30°→0°)のIFPの動き
(左:健常者、右:変形性膝関節症患者)
13)より画像引用

図8 変形性膝関節症患者と健常者の膝関節屈曲30°および0°のIFP体積
13)より画像引用

【IFPの疼痛誘発テスト】
IFPの疼痛誘発テストには、Hoffa test¹⁴⁾が挙げられます。 

Hoffa testでは、膝蓋腱の内側および外側かつ膝蓋骨より下方に母指でしっかりと圧を加えます。膝関節屈曲30〜60°位から他動で完全伸展させると疼痛が誘発される場合に陽性となります(図9)。

図9 Hoffa test
14)より画像引用

膝蓋腱に圧を加えて上記と同一方法で検査を行うJason test¹⁵⁾もあります。膝蓋下脂肪体の内圧が膝関節伸展位で高まる事実に基づいた検査方法とされています。

【IFPの可動性評価¹⁶⁾
IFPを徒手的に内側および外側に動かし、健側との比較を行うことでIFPの動きの制限を評価することができます(図10)。

図10 IFPの可動性評価
16)より画像引用

【IFPに対する評価アプローチ】

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