回旋筋腱板の機能解剖学と触診アプローチ

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棘上筋の機能解剖

【棘上筋の解剖】¹⁾
起始:肩甲骨棘上窩
停止:上腕骨大結節
支配神経:肩甲上神経(C4ーC6)
作用:肩関節外転

棘上筋は、前部繊維後部繊維に分けられます(図1)。

図1 棘上筋の繊維

棘上筋前部繊維は、大結節の最も高位にあり腱性部は長くて太くなっています²⁾³⁾。上腕骨内旋作用があるとされています。
棘上筋後部繊維は、筋性部であり表層を棘下筋が覆っています²⁾。

棘上筋停止部の一部は、小結節に付着する²⁾と報告されています(図2)。

図2 棘上筋停止部の解剖
2)より画像引用

肩関節外転運動時の棘上筋と三角筋の相互作用は、動作の安定性に寄与しフォースカップル⁴⁾と呼ばれています(図3)。

図3 腱板(棘上筋)と三角筋のフォースカップル
4)より画像引用

棘上筋の屈曲および外転作用⁵⁾は、上腕骨下垂位で最も大きく、屈曲および外転角度が大きくなるにつれてモーメントアームは減少します。120°屈曲位ではほとんど屈曲作用はなくなるとされています。

棘上筋の触診とアプローチ

棘上筋はその表面を僧帽筋中部繊維に覆われています(図4)。

図4 棘上筋の解剖図

棘上筋は、肩甲棘の上方をやや強めに圧迫することで僧帽筋の深部でコリっとした筋腹に触れることができます。

🎥棘上筋の触診とアプローチ

棘下筋の機能解剖

【棘下筋の解剖】¹⁾
起始:肩甲骨棘下窩
停止:上腕骨大結節
支配神経:肩甲上神経(C4ーC6)
作用:上腕骨外旋

棘下筋全体では、肩関節外転45°から筋活動が増加し90°以上で強く作用²⁾します。また肩関節屈曲位よりも外転位のほうが外旋モーメントが大きい⁵⁾です(屈曲位では小円筋の作用が大きい)。

棘下筋は、横走繊維(上部繊維)と斜走繊維(下部繊維)に分けられます(図5)。

図5 棘下筋の繊維

棘下筋横走繊維は、斜走繊維に停止²⁾します。上腕骨下垂での外旋で収縮強度が高まります⁶⁾。肩関節外転角度が大きい肢位では外旋運動の筋活動が低下⁷⁾し(図6)、肩関節屈曲90°位ではその作用ベクトルの関係よりむしろ水平伸展筋として作用⁶⁾します。
棘下筋斜走繊維は、大結節上面に停止²⁾します。肩関節外転角度が大きい肢位で外旋運動の棘下筋全体に対する斜走線維の活動比が高まります⁷⁾。

図6 異なる外転角度における外旋運動
A:肩甲上腕関節外旋の運動方向(細矢印)と横走線維方向(太矢印)が一致
B:肩甲上腕関節外旋の運動方向(細矢印)と横走線維方向(太矢印)が不一致
7)より画像引用

棘下筋の触診とアプローチ

棘下筋横走繊維は、肩甲棘のすぐ下方⁶⁾で触れられます。
棘下筋斜走繊維は、肩甲骨下角の2横指上方に溝⁸⁾があり、さらにその上方で触れることができます。

🎥棘下筋の触診とアプローチ

小円筋の機能解剖学

【小円筋の解剖】¹⁾
起始:肩甲骨外側縁
停止:上腕骨大結節
支配神経:腋窩神経(C5,C6)
作用:上腕骨外旋,わずかに内転

小円筋は、第3肢位での外旋運動で働きが高まります⁴⁾⁶⁾。

小円筋は、上部繊維と下部繊維に分けられます(図7)。起始から停止に向かいねじれるように走行するため、停止部における上部筋束は起始部では遠位(肩甲骨外側縁)に停止し、下部筋束は起始部では近位(棘下筋側)に位置します⁶⁾。

図7 小円筋の繊維

小円筋上部繊維²⁾は、腱性部であり、肩甲骨外側縁から起始し大結節下面に停止します。肩関節屈曲90°内旋位からの外旋に作用するとされています。
小円筋下部繊維²⁾は、筋性部であり、棘下筋との筋間中隔より起始し上腕骨外科頸に停止します。

小円筋の触診とアプローチ

小円筋は肩甲骨外側縁の近位内側で触れることができます。第3肢位での内旋位からの外旋運動で強い収縮を触知することができます。

🎥小円筋の触診とアプローチ

肩甲下筋の機能解剖学

【肩甲下筋の解剖】¹⁾
起始:肩甲骨の肩甲下窩
停止:上腕骨小結節
支配神経:肩甲下神経(C5ーC8)
作用:上腕骨内旋

肩甲下筋は5〜6個の筋束⁹⁾を持ち、上部繊維、中部繊維、下部繊維に分類されます(図8)。

図8 肩甲下筋の繊維

肩甲下筋は肩内外旋申間位における挙上角度の変更により上腕骨長軸に対し垂直に近い線維が最も強く肩関節内旋運動に作用します¹⁰⁾。つまり、内旋作用は挙上角度の増大に伴い上部繊維よりも下部繊維が高くなります(図9)。

図9 肩甲骨面挙上肢位での肩甲下筋上部 ・中部 ・下部の 代表的な筋電図波形
10)より引用

肩甲下筋上部繊維(上1/3)²⁾¹⁰⁾は、小結節より上方に停止し、上腕骨下垂位での内旋で主に作用します。

肩甲下筋中部繊維(中1/3)²⁾¹⁰は、小結節に停止し、肩甲骨面挙上60°および外転60°位での内旋で主に作用します。

肩甲下筋下部繊維(下1/3)²⁾¹⁰は、小結節に停止し、肩甲骨面挙上120°での内旋、外転120°位での内転で主に作用します。

肩甲下筋の触診とアプローチ

肩甲下筋の筋腹は、肩甲下窩(肩甲骨の内面)にあり、第2肢位での内旋運動で特に下部繊維の筋収縮を確認することができます。

🎥肩甲下筋の触診とアプローチ

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参考・引用文献一覧
1)坂井建雄,他監訳:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版,株式会社医学書院,2017.
2)林典雄:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹 改訂第2版.株式会社メディカルビュー社,2014.
3)Mochizuki, Tomoyuki, et al. "Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus: new anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff." JBJS 90.5 (2008): 962-969.
4)林典雄:肩関節拘縮の評価と運動療法.株式会社運動と医学の出版社,2013.
5)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能.株式会社メディカルビュー社,2017.
6)林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢 改訂第2版.株式会社メジカルビュー社,2011.
7)佐藤真樹, et al. 肩関節肢位の違いによる棘下筋の線維別筋活動の変化. 日本臨床スポーツ医学会誌/日本臨床スポーツ医学会編集委員会 編, 2023, 31.1: 137-144.
8)高田治実:マイオチューニングアプローチ入門 痛みと麻痺に対する治療的手技.株式会社協同医書出版社,2009.
9)Neumann, Donald A:筋骨格系のキネシオロジー 原著 第3版.医歯薬出版株式会社, 2012.
10)中山裕子, et al. 肩関節挙上角度と肩甲下筋の筋活動の関係. 理学療法学, 2008, 35.6: 292-298.