頸部痛の理学療法まとめ①〜頸部の解剖学、リスク管理(red flags)〜

頸部の解剖学

頸部の区分と筋肉

頸部は、前頸部胸鎖乳突筋部外側頸三角部(後頸三角)後頸部に分けられます¹⁾²⁾(図1、2)。

図1 頸部の区分と筋肉
1)より画像引用

前頸部は、両側の胸鎖乳突筋前縁と下顎骨の下縁で囲まれた領域です(図2)。さらに細かく、A .顎下三角B .オトガイ下三角C .頸動脈三角D.筋三角の4つに区分されます(図1)。

胸鎖乳突筋部は、胸鎖乳突筋が存在する領域です(図2)。

外側頸三角部(後頸三角)は、僧帽筋の前縁と胸鎖乳突筋の後縁および鎖骨で囲まれた領域です(図2)。さらに細かく、E.後頭三角F.鎖骨三角の2つに区分されます(図1)。

後頸部は、上項線より下で第7頸椎より上で僧帽筋が占める領域を示します。

図2 頸部の区分

後頸部の解剖

頸部伸展筋群4層となっています³⁾⁴⁾(図3、4、5)。

図3 後頸部(表層)の筋肉
5、6)より画像引用一部改変

図4 後頸部(深層)の筋肉
7、8)より画像引用

図5 頸部伸展筋群の4層(MRI)
9)より画像引用一部改変

第1層には、僧帽筋肩甲挙筋が存在します(図5)。
第2層には、頭板状筋が存在します(図5)。
第3層には、頭半棘筋が存在します(図5)。
第4層には、頸半棘筋および回旋筋多裂筋が存在します。

頸半棘筋は、大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋とともに頸部深層筋群³⁾として考えられています。

頸部のリスク管理

急性頚部痛のred flags

red flags(レッドフラッグス)とは、危険信号であり重篤な疾患の示唆する症状や所見をred flag signと呼びます。

以下は、スクリーニングとして用いられる急性頚部痛のred flags¹⁰⁾です。

【急性頸部痛のred flags】¹⁰⁾
・発症年齢:50歳以上
・人生初めての症状(first episode)
・突然発症(Sudden onset):”何時から発症した””テレビを見ているときに突然に”といったように明らかに発症の時間が特定できるような痛み
・尋常でない痛み(worst pain)
・頸部の可動域制限がない
・胸部痛がある
・下肢痛が先行している
・歩行障害がある
・膀胱直腸障害がある
・癌、ステロイド治療中、HIV感染の既往
・栄養不良、体重減少がある
・発熱がある
・複数の神経学的異常所見がある(例:麻痺、知覚どんま、異常感覚、腱反射低下、意識障害、髄膜刺激症状、視野欠損、眼球運動異常、小脳失調)

上記に当てはまる急性頸部痛ではリハビリが禁忌となる場合もあるので、しっかりと押さえておきましょう。

触診時に注意したい頸部の領域

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