腰痛概論〜分類と評価ツール〜

腰痛の定義と分類

 

腰痛とは、腰部を主とした痛みやはりなどの不快感といった症状の総称です。

医師の診察および画像の検査(X 線やMRI など)で腰痛の原因が特定できる特異的腰痛と、厳密な原因が特定できない非特異的腰痛に分けられます¹⁾。

一般に、特異的腰痛は約15%非特異的腰痛は約85%の割合²⁾とされており、これは多くの症状が、画像所見だけでは捉えきれないことを示唆しています(図1)。

図1 特異的腰痛と非特異的腰痛の割合①
1)を参考に作成

一方、腰痛診療ガイドライン改訂第2版では、腰痛の75%が診断可能で、診断不明の非特異的腰痛は22%に過ぎなかった³⁾⁴⁾とも報告されています(図2)。

図2 特異的腰痛と非特異的腰痛の割合②
4)を参考に作成

腰痛診療ガイドライン改訂第2版の報告では、これまで非特異的腰痛とされてきた椎間関節性腰痛、筋・筋膜性腰痛、椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛にも診断がつけられています。

これは、臨床所見と照らし合わせることで腰痛の多くは診断できるようになったとも言えます。

またこれに関しては、画像所見と臨床所見が必ずしも一致しないことを抑えておく必要があります。

SD Boden⁵⁾は、健常者67名を対象とした調査において、60歳未満のグループでは、20%に椎間板ヘルニア、1名に脊柱管狭窄症を認め、60歳以上のグループでは、36%に椎間板ヘルニア、21%に脊柱管狭窄症を認めたと報告しています。

Kanayama⁶⁾は、健常者200名を対象とした調査において、椎間板ヘルニアがL4/5 高位で25%、L5/S1高位で35%に認めたと報告しています。

MRI画像で椎間板の膨隆や突出を認めたり(腰椎椎間板ヘルニア)、脊柱管の狭窄がある(脊柱管狭窄症)からといって症状が必ずしも存在するわけではありません。
むしろご高齢の方であれば、画像上の問題はあっても疾患の特異的な症状がないことも珍しくありません。

非特異的腰痛の評価ツール

非特異的腰痛を細分化し、グループに対して特異的介入を行うことが重要視されています。

ここでは非特異的腰痛に対する2つの分類法(評価ツール)をご紹介します。

STarT back screening tool(SBST)

STarT back screening tool(以下、SBST)⁷⁾は、簡易的に心理社会的要因の把握ができ、腰痛予後のリスク度に応じて分類できます(図3)。

図3 SBSTの評価項目
7)より引用

SBSTにおけるHigh risk群では、認知行動的アプローチを初期の段階から導入したほうが望ましいとされています。

O’Sullivan Classification System(OCS)

O’Sullivan Classification System(以下、OCS)⁸⁾⁹⁾は、生物心理社会モデルに基づいて心理的因子の影響も含めて階層的にsubgroup化(分類)していることが特徴です(図4)。

図4 OCSの評価項目
8)より画像引用

NEXT

🔻新・臨床WEBサービス「forPT ONLINE」無料体験実施中!🔻

 

参考・引用文献一覧
1)厚生労働省:腰痛対策
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0001.pdf.最終閲覧日2022.2.20.
2)Deyo, Richard A., James Rainville, and Daniel L. Kent. "What can the history and physical examination tell us about low back pain?." Jama 268.6 (1992): 760-765.
3)日本整形外科学会,他:腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版,株式会社南江堂,2019.
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf .最終閲覧日2022.2.21.
4)Suzuki, Hidenori, et al. "Diagnosis and characters of non-specific low back pain in Japan: the Yamaguchi low back pain study." PLoS One 11.8 (2016): e0160454.
5)Boden, SCOTT D., et al. "Abnormal magnetic-resonance scans of the cervical spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation." JBJS 72.8 (1990): 1178-1184.
6)Kanayama, Masahiro, et al. "Cross-sectional magnetic resonance imaging study of lumbar disc degeneration in 200 healthy individuals." Journal of Neurosurgery: Spine 11.4 (2009): 501-507.
7)松平浩; 藤井朋子. 診療ガイドライン, エビデンスを踏まえた慢性腰痛に対する患者主導型治療へ向けて─ Stratified approach (層化アプローチ) の重要性. PAIN RESEARCH, 2017, 32.4: 252-259.
8)
飯塚雄亮, et al. 非特異的腰痛に対して STarT Back Screening Tool と O’Sullivan Classification System を組み合わせた stratified care を用いて介入を行い奏功した一症例. 徒手理学療法, 2020, 20.2: 41-48.
9)三木貴弘, et al. 生物心理社会モデルに基づく非特異的腰痛に対する理学療法の進化. Journal of Spine Research, 2021, 12.6: 825-830.