腰部脊柱管狭窄症の診断基準

腰部脊柱管狭窄症
1)より画像引用
腰部脊柱管狭窄症においても、病歴や臨床所見、画像所見から総合的に判断し診断がなされます。
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂第 2 版²⁾では、腰部脊柱管狭窄症の診断において、最も信頼性のある画像診断法としてMRIの有用性が報告されています。しかし、画像所見はあくまで補助診断であり、病歴や臨床所見を優先すべきだとも言われています。
以下は、腰部脊柱管狭窄症の診断に有用な病歴および臨床所見²⁾になります。
・中高齢者
・殿部から下肢に痛みやしびれ
・症状が歩行や立位で増悪し、座位や前屈で軽減する
腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状のひとつに間欠跛行があります。間欠破行は一定の距離を歩くと下肢の痛みや痺れ、脱力感等の神経症状が増悪し、少し休むと症状が軽減するのが特徴です。
末梢動脈疾患(peripheralarterial disease:PAD)などの血管性間欠跛行との鑑別が重要とされます。
脊柱管狭窄症の間欠跛行では、座位や前屈位で症状が軽減するのに対して、血管性間欠跛行では姿勢と関係せず、立ち止まるだけで下肢痛が軽減するのが特徴¹⁰⁾です。また両者は合併することもあるため留意しておく必要があります。
脊柱管狭窄症では、診断のスクリーニングとして多くの診断サポートツールの開発が進んでおり、その有用性も示されています。診断サポートツールには、医師用と患者自記式の2種類が存在します。
【脊柱管狭窄症の診断サポートツール一覧】²⁾³⁾⁴⁾
・腰部脊柱管狭窄診断サポートツール(日本脊椎脊髄病学会、図2)
・腰部脊柱管狭窄症自記式診断サポートツール(東北腰部脊柱管狭窄症研究会)
・神奈川版 LCS 診断ツール
・The N-CLASS criteria (clinical classification criteria for neurogenic claudication caused by lumbar spinal stenosis)
・神経因性膀胱(下部尿路症状)評価の国際前立腺症状スコア(IPSS)
・腰部脊柱管狭窄診断サポートツール(九州・沖縄版)

図2 日本脊椎脊髄病学会の腰部脊柱管狭窄診断サポートツール
4)より画像引用
各診断サポートツールの項目を見ると、前屈で下肢症状が出現する、SLRテスト陽性は、脊柱管狭窄症の可能性を低いと捉える判断材料となっています。
これは腰椎椎間板ヘルニアと鑑別する上でも重要事項だと考えられます。
MEMO 腰部脊柱管狭窄症の約9割が陽性になるテスト⁵⁾
腰部脊柱管狭窄症の患者108例のうちの100例(92.6%)が陽性となったテストがあります。それは、膝窩部で脛骨神経の圧痛所見をとるtibial nerve compression testです(図3)。健常対象群よりも有意に多く、その有用性が報告されています。

図3 tibial nerve compression test
5)より画像引用