股関節周囲で生じる疼痛の原因や病態は様々存在します。
・大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(femoroacetabular impingement;以下FAI)
・グローインペイン症候群(鼠径部痛)
・股関節インピンジメント症候群
これらの病態の違いを明確に把握できていますか?
今回の記事では、股関節周囲で生じる疼痛(以下:股関節痛)の種類と上記3つの病態の違いをご紹介します。
股関節痛の種類
股関節痛の種類には原因によって、以下のものが挙げられます。
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股関節周囲で疼痛を訴えやすい部位と原因疾患¹⁾
【股関節前面】
・肉離れ(内転筋、大腿四頭筋、腸腰筋、腹直筋)
・腸腰筋滑液包炎、腸恥包炎
・鼠径ヘルニア
・恥骨結合機能不全
・股関節唇損傷
・大腿寛骨臼インピンジメント(FAI)
・股関節症
・大腿四頭筋打撲
・内側弾発股
【股関節外側面】
・外側弾発股
・ヒップポインター(腸骨稜上部の打撲)
・大腿筋膜張筋症候群
・大転子包炎、変性
・知覚異常性大腿神経痛
【股関節後面】
・坐骨包炎
・肉離れ(大殿筋、中殿筋、ハムストリングス)
・大殿筋打撲
・仙腸関節機能不全、捻挫
・梨状筋症候群
・尾骨損傷
【股関節痛を呈する重篤な疾患】
・疲労骨折(大腿骨頚部、恥骨枝、臼蓋)
・大腿骨頭すべり症
・感染性関節炎
・尿路感染
・大腸憩室炎
・ペルテス病
・鼠径リンパ腫脹
・腎結石
・強直性脊髄炎
・股関節脱臼
・大腿骨頭壊死
・前立腺炎
・虫垂炎
・腫瘍
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大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI)
大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAI)は、大腿骨側または寛骨臼側、もしくはその両方の軽微な骨形態異常が背景となり、股関節動作時に骨頭頸部移行部と寛骨臼縁が繰り返し接触・衝突し、力学的負荷が加わることにより関節軟骨あるいは関節唇に損傷をきたしうる病態¹⁾とされています。
FAIは以下の3つのタイプに分類されます。
FAIの分類
A:cam変形(大腿骨頚部移行部のくびれの減少・平坦化)
B:pincer変形(寛骨臼の過剰被覆、寛骨臼の後方開き)
C:cam変形(A)とpincer変形(B)の混合タイプ
2)より画像引用一部改変
FAIはいわゆる股関節インピンジメント症候群と混同されやすいですが、FAIは骨形態異常が背景にあるため、その違いを理解しておきましょう。
グローインペイン症候群(鼠径部痛)
グローインペイン症候群(鼠径部痛)は、鼠径部周囲に生じる疼痛全般のことだと一般に捉えられています。(ただし、器質的変化は伴わず、骨盤周囲の機能異常による鼠径部痛³⁾と定義される場合もあります。)
原因は複数存在し、確立された診断方法や評価方法がない⁴⁾のが現状です。
グローインペイン症候群は、その原因によって以下のように分類されます。
グローインペインの分類¹⁾
①内転筋由来
②腸腰筋由来
③鼠径管由来
④恥骨由来
⑤股関節由来
⑥その他
鼠径または大腿ヘルニア
ヘルニア修復術後
神経絞扼(閉鎖孔、腸骨鼠径、陰部大腿、腸骨下腹)
関連痛(腰椎、仙腸関節)
骨端症、剥離骨折(ASIS、AIIS、恥骨)
グローインペイン症候群については、以下の記事に詳細を記載しています。ご参照してみてください。
いかがでしょうか。
股関節痛といっても疼痛が生じている組織や原因は本当に様々です。
理学療法評価に向けてまずは、各病態の違いをしっかり把握しておきましょう。
今回の内容に関してnoteのご紹介
今回の内容はforPTの限定note『股関節痛の理学療法〜骨頭求心位獲得のための評価とアプローチ〜』より一部内容を抜粋しています。
股関節痛に関する基礎知識や股関節インピンジメント症候群のアプローチ方法について学びたい方は読んでみてください。一部無料公開しています。
参考・引用文献一覧
1)永井聡,他:股関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く.株式会社メジカルビュー社 第1版,2018.
2)変形性股関節症 - Mindsガイドラインライブラリhttps://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/osteoarthritis-of-the-hip/osteoarthritis-of-the-hip.pdf .最終閲覧日2021.4.8.
3)仁賀定雄. 鼠径部痛症候群: 治療の変遷と展望を語る (January Special 鼠径部痛症候群: その概念とリハビリテーション・予防). Sportsmedicine, 2014, 26.1: 2-16.
4)HÖLMICH, Per. Long-standing groin pain in sportspeople falls into three primary patterns, a “clinical entity” approach: a prospective study of 207 patients. British journal of sports medicine, 2007, 41.4: 247-252.
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