グローインぺイン症候群(鼠径部痛)の病態とリスクファクター

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グローインペイン症候群とは


グローインペイン症候群は
鼠径部周囲に生じる疼痛全般と捉えられています。
ただし、器質的変化は伴わず、骨盤周囲の機能異常による鼠径部痛1)と定義される場合もあります。

原因は複数存在し、確立された診断方法や評価方法がない2)のが現状です。

グローインペイン症候群の分類

2014年カタールのドーハでアスリートの鼠径部痛を定義する目的で、「ドーハ会議」が開催されました。

それにより提唱されたドーハ分類では、アスリートの鼠径部痛を4つの疾患概念3)にまとめています。

①内転筋由来
②腸腰筋由来
③鼠径部由来
④恥骨由来

上記4つに加えて股関節由来を含めて鑑別されます(図1)。診断には、圧痛抵抗時痛を用いて行われます。

その他の原因には以下が挙げられています。

鼠径または大腿ヘルニア
ヘルニア修復術後
神経絞扼(閉鎖孔、腸骨鼠径、陰部大腿、腸骨下腹) 
関連痛(腰椎、仙腸関節)
骨端症、剥離骨折(ASIS、AIIS、恥骨)
4)より引用

鼠径部周囲に生じている疼痛を評価する時には、これらの可能性があることを理解しておく必要があります。

グローインペイン症候群の運動学的リスクファクター

グローインペイン症候群の運動学的リスクファクター(ROM、筋力、運動パターンの特徴)には以下が挙げられます。

股関節外旋可動域の減少
股関節内転筋力の低下
股関節屈曲運動中の長内転筋に対する中殿筋の筋活動の比率の低下
自動下肢伸展挙上運動初期の腹部筋活動の開始遅延
4)より引用

これらのリスクファクターは、理学療法評価のポイントになるので、必ず押さえておきましょう。

鼠径部における領域別の病態

グローインペイン症候群の評価では、疼痛部位(組織)の特定が重要になります。

グローインペイン症候群の病態を予測する上で、Groin triangleの知識が役立ちます

Groin triangle

Groin triangleとは、ASIS恥骨結節ASISと膝蓋骨底を結んだ線の中心点(3G point) の3点を結んだ三角形の領域5)を言います(下図)。

Groin triangle
5)より画像引用一部改変

 

このGroin triangleを指標として、Groin triangleの上部、内側部、中央部の3領域に分けてることでおおまかな病態を捉えることができます。

各領域内で生じる病態は以下の通りです。

Groin triangleの上部
腹直筋腱炎
外腹斜筋腱膜断裂
結合腱損傷
鼠径ヘルニア
腸骨鼠径神経絞扼
腸骨下腹神経絞扼

 

Groin triangleの内側部
恥骨炎
内転筋損傷(腱付着部/筋腱移行部)
閉鎖神経絞扼

 

Groin triangleの中央部
大腿直筋腱炎
大腿ヘルニア
陰部大腿神経絞扼
腸腰筋腱炎/滑液包炎

 

グローインペイン症候群は、股関節インピンジメントとともに股関節周囲の疼痛を引き起こしやすい病態になります。

まずは、何の組織が痛いのか(圧痛所見)を評価できると良いです。

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参考・引用文献
1)仁賀定雄. 鼠径部痛症候群: 治療の変遷と展望を語る (January Special 鼠径部痛症候群: その概念とリハビリテーション・予防). Sportsmedicine, 2014, 26.1: 2-16.
2)HÖLMICH, Per. Long-standing groin pain in sportspeople falls into three primary patterns, a “clinical entity” approach: a prospective study of 207 patients. British journal of sports medicine, 2007, 41.4: 247-252.
3)Weir, Adam, et al. "Doha agreement meeting on terminology and definitions in groin pain in athletes." British journal of sports medicine 49.12 (2015): 768-774.
4)永井聡,他:股関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く.株式会社メジカルビュー社 第1版,2018.
5)FALVEY, Eanna Cian; FRANKLYN-MILLER, Andrew; MCCRORY, P. R. The groin triangle: a patho-anatomical approach to the diagnosis of chronic groin pain in athletes. British journal of sports medicine, 2009, 43.3: 213-220.