理学療法

グローインぺイン症候群(鼠径部痛)の病態と触診による疼痛組織の推論法

グローインペイン症候群を評価できていますか?

 

グローインペイン症候群(鼠径部痛)とは、

鼠径部周囲に生じる疼痛全般のことだと一般に捉えられています。
(ただし、『器質的変化は伴わず、骨盤周囲の機能異常による鼠径部痛1)と定義される場合もあります。)

原因は複数存在し、確立された診断方法や評価方法がない2)のが現状です。

 

では、理学療法士はこのグローインペイン症候群にどう立ち向かったら良いのでしょうか?

 

今回の記事では、グローインペイン症候群分類運動学的リスクファクター理学療法評価方法、そして理学療法評価をするうえで重要な触診による疼痛組織の推察法をご紹介します。

 

グローインペイン症候群の分類

議論は様々ありますが、主な原因組織によって以下のように分類3)されます。

①内転筋由来
②腸腰筋由来
③鼠径管由来
④恥骨由来
⑤股関節由来
⑥その他
 鼠径または大腿ヘルニア
 ヘルニア修復術後
 神経絞扼(閉鎖孔、腸骨鼠径、陰部大腿、腸骨下腹) 
 関連痛(腰椎、仙腸関節)
 骨端症、剥離骨折(ASIS、AIIS、恥骨)

 

鼠径部周囲に生じている疼痛を評価する時には、これらの可能性があることをまずは念頭に入れておく必要があります。

グローインペイン症候群の運動学的リスクファクター

グローインペイン症候群の運動学的リスクファクター(ROM、筋力、運動パターンの特徴)には以下が挙げられます3)

・股関節外旋可動域の減少
・股関節内転筋力の低下
・股関節屈曲運動中の長内転筋に対する中殿筋の筋活動の比率の低下
・自動下肢伸展挙上運動初期の腹部筋活動の開始遅延

 

これらのリスクファクターは、理学療法評価のポイントになるので、必ず押さえておきましょう。

 

グローインペイン症候群の理学療法評価

グローインペイン症候群の理学療法評価は、以下の手順で進めます。

①疼痛部位(組織)の特定
②疼痛減弱テストを用いて起因となる骨盤のマルアライメントや機能を抽出
③疼痛組織へのストレスを増大させる可能性のあるダイナミックアライメントや機能評価

 

①疼痛部位(組織)の特定

 触診による圧痛所見や組織の伸張痛、収縮時痛などの評価によって疼痛を生じている組織を推察していきます


②疼痛減弱テストを用いて起因となる骨盤のマルアライメントや機能を抽出

 骨盤アライメントの修正や異常な関節運動パターンの改善などによって、疼痛の減弱がみられるのかを評価します。


③疼痛組織へのストレスを増大させる可能性のあるダイナミックアライメントや機能評価

 動作分析や筋機能評価などによって、疼痛部位にストレスをかけている動作を評価します。

 

触診による疼痛組織の推察法

グローインペイン症候群の理学療法評価において、まず、①疼痛部位(組織)の特定をすることを前項で挙げました。

疼痛部位の特定には、触診技術を用いて圧痛所見を的確に評価することが大切です。

グローインペイン症候群の触診による圧痛所見を評価するには、

Groin triangle を知っておくと良いです。


Groin triangle

Groin triangleとは、ASIS恥骨結節ASISと膝蓋骨底を結んだ線の中心点(3G point) の3点を結んだ三角形の領域4)を言います(下図)。

Groin triangle
4)より画像引用一部改変

 

触診では、このGroin triangleを目印として、

・Groin triangleの上部
・Groin triangleの内側部
・Groin triangleの中央部

の3領域に分けて、疼痛を生じている組織を探っていきます。

 

各領域内で生じうる病態は以下の通りです。

Groin triangleの上部

腹直筋腱炎
外腹斜筋腱膜断裂
結合腱損傷
鼠径ヘルニア
腸骨鼠径神経絞扼
腸骨下腹神経絞扼


Groin triangleの内側部

恥骨炎
内転筋損傷(腱付着部/筋腱移行部)
閉鎖神経絞扼


Groin triangleの中央部

大腿直筋腱炎
大腿ヘルニア
陰部大腿神経絞扼
腸腰筋腱炎/滑液包炎

 

3領域からより細かく組織を触り分ける触診技術があれば、疼痛部位の特定をすることができます。それには触診の鍛錬が必要です。

 

ですが、

まずはこの3領域で分けて捉えるだけでも病態を推測するのにとても役立ちますので、疼痛組織を推察することからはじめてみましょう。

 

いかがでしょうか?

 

グローインペインの理学療法に悩むセラピストのお役に立てたら幸いです。

情報は随時更新していきます。

 

参考・引用文献
1)仁賀定雄. 鼠径部痛症候群: 治療の変遷と展望を語る (January Special 鼠径部痛症候群: その概念とリハビリテーション・予防). Sportsmedicine, 2014, 26.1: 2-16.
2)HÖLMICH, Per. Long-standing groin pain in sportspeople falls into three primary patterns, a “clinical entity” approach: a prospective study of 207 patients. British journal of sports medicine, 2007, 41.4: 247-252.
3)青木治人,他:スポーツリハビリテーションの臨床.株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナル,2019.
4)FALVEY, Eanna Cian; FRANKLYN-MILLER, Andrew; MCCRORY, P. R. The groin triangle: a patho-anatomical approach to the diagnosis of chronic groin pain in athletes. British journal of sports medicine, 2009, 43.3: 213-220.

 

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