下腿の筋肉の起始停止・作用・支配神経

下腿の筋肉(触診あり)

前脛骨筋

起始:脛骨外側顆、脛骨外側面の近位2分の1
停止:内側楔状骨の内側足底面と第1中足骨底
作用:足関節の背屈と内反
支配神経:深腓骨神経

前脛骨筋は、内側縦アーチを挙上する機能があり、足部が床面に固定されている条件下では、下腿を前傾します¹⁾。歩行においては、荷重応答期(ローディングレスポンス)で、足部底屈運動の減速に作用²⁾します。さらに距骨下関節およびショパール関節を回外位に保持する働きがあります。

第三腓骨筋

起始:腓骨と下腿骨間膜の前面の遠位側3分の1
停止:第5中足骨底の背側面
作用:足関節の背屈、足部の外転の補助
支配神経:深腓骨神経

第三腓骨筋は、不意に生じる回外運動に対する固有感覚器としての作用を有する³⁾とも言われる一方で、白人の人口の5%から17%で欠如しており、また足関節の靭帯損傷のリスクに影響を与えないことや第3腓骨筋が欠如していても背屈や外反筋力が低下しない⁴⁾ことが示されています。

長趾伸筋

起始:脛骨外側顆、腓骨と下腿骨間膜の前面の近位側4分の3
停止:第2~5趾の中節骨と末節骨
作用:第2~5趾の伸展、足関節の背屈
支配神経:深腓骨神経

足部捻挫の受傷肢位は足関節の底屈・内反位である場合が多いため、長趾伸筋の機能はこの肢位に拮抗するために重要である¹⁾とされます。

長母趾伸筋

起始:腓骨と下腿骨間膜の前面の中央部
停止:母趾の末節骨底の背側面
作用:第1趾の伸展、足関節の背屈
支配神経:深腓骨神経

長母指伸筋は、L5神経根障害や総腓骨神経障害では機能不全に陥りやすい¹⁾とされています。

短腓骨筋

起始:腓骨外側面の遠位側3分の2
停止:第5中足骨の外側粗面の背側面
作用:足部の外転と足関節の底屈
支配神経:浅腓骨神経

短腓骨筋は、外側縦アーチを挙上する機能¹⁾があり、長足底靱帯の作用と同様、踵立方関節が下方に開くのを防止する⁵⁾とされています。

長腓骨筋

起始:腓骨頭と腓骨外側面の近位側3分の2
停止:第1中足骨と内側楔状骨の足底面
作用:足部の外転と足関節の底屈
支配神経:浅腓骨神経

長腓骨筋は、外側縦アーチと横アーチを挙上する機能がある¹⁾とされています。さらに、第1中足骨を屈曲(底屈) ·外反方向に固定(locking effect)することで、荷重時に母趾の支持性·安定性を高める¹⁾とされています。

後脛骨筋

起始:ヒラメ筋線より下方の脛骨後面、骨間靱帯、腓骨後面の近位2分の1
停止:舟状骨粗面および楔状骨、立方骨、第2~4中足骨
作用:足関節の底屈と内反
支配神経:脛骨神経

後脛骨筋は、内側縦アーチを挙上させる機能は少ないが、舟状骨粗面や内側楔状骨の下降を抑止する機能がある¹⁾とされています。また、歩行の踵接地直後のヒールロッカーにおいて、長腓骨筋と同時収縮をすることで、アーチ構造を安定させます⁶⁾(クロスサポートメカニズム)。

腓腹筋

起始:
 外側頭:大腿骨外側顆の外側面
 内側頭:大腿骨内側顆より上の膝窩面
停止:アキレス腱(踵骨後面)
作用:足関節の底屈、膝関節の屈曲の補助
支配神経:脛骨神経

腓腹筋はtypeⅡb線維が多く、ダッシュやジャンプなどの推進力を生み出す役割が強い⁷⁾⁸⁾とされています。

ヒラメ筋

起始:腓骨頭の後面、腓骨後面の近位4分の1
停止:アキレス腱(踵骨後面)
作用:足関節の底屈、直立姿勢保持
支配神経:脛骨神経

ヒラメ筋はtypeⅠ線維が多く、姿勢保持筋としての役割が大きい⁷⁾⁸⁾とされています。

膝窩筋

起始:大腿骨外側顆の外側半月
停止:ヒラメ筋線より上方の脛骨後部
作用:膝関節の軽度屈曲と内旋、大腿骨を固定から解放する
支配神経:脛骨神経

膝窩筋の起始の一部は外側半月板に付着し、膝関節屈曲時に後方へ引くことで顆部との挟み込みを防ぐ⁹⁾とされています。

足底筋

起始:大腿骨外側顆上線と斜膝窩靱帯の下端
停止:アキレス腱(踵骨後面)
作用:腓腹筋の補助
支配神経:脛骨神経

足底筋は、筋断面積が極めて小さいことから、作用的に無視されることが多いが、膝関節の屈曲·内旋と足関節底屈·内返しに働く²⁾とされています。

長趾屈筋

起始:脛骨後面中央部のヒラメ筋線より下方
停止:第2~5趾の末節骨底面
作用:第2~5趾の屈曲、足関節の底屈
支配神経:脛骨神経

長趾屈筋は、足関節を底屈·内反し、第2~5趾のMTP関節·PIP関節·DIP関節を 屈曲させる作用があります。また、内側縦アーチを補助的に挙上する機能がある¹⁾とされています。

長母趾屈筋

起始:腓骨後面と下腿骨間膜の遠位側3分の2
停止:第1趾の末節骨底
作用:第1趾の屈曲、足関節の底屈
支配神経:脛骨神経

長母趾屈筋は、足関節背屈位において内側縦アーチを挙上する機能がある¹⁾とされています。長母趾屈筋の短縮によって足関節背屈時の距骨の後方滑りを制限されやすい¹⁰⁾とされています。

参考・引用文献一覧
1)赤羽根良和:足部・足関節痛のリハビリテーション.株式会社羊土社,2020.
2)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能.株式会社メディカルビュー社,2017.
3)村野勇:足関節拘縮の評価と運動療法.株式会社運動と医学の出版社,2022.
4)Witvrouw, Erik, et al. "The significance of peroneus tertius muscle in ankle injuries: a prospective study." The American journal of sports medicine 34.7 (2006): 1159-1163.
5)安倍浩之:簡単!効率的につくれる新型インソール 運動連鎖アプローチが姿勢・歩行を快適にする.株式会社三輪書店,2012.
6)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践 第1版.株式会社メディカルビュー社,2015.
7)監修 片寄 正樹:足部・足関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く.株式会社メジカルビュー社,2018.
8)Schepsis, Anthony A., Hugh Jones, and Andrew L. Haas. "Achilles tendon disorders in athletes." The American journal of sports medicine 30.2 (2002): 287-305.
9)林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹 改訂第2版.株式会社メジカルビュー社,2012.
10)工藤慎太郎:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.株式会社医学書院,2017.