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頭部前方位姿勢と障害
頭部のアライメントで最も評価する機会が多い一つに、頭部前方位姿勢Forward head posture(FHP)が挙げられます。
頭部前方位姿勢は、18歳以上の成人および高齢者において頸部痛との関連性¹⁾が示されています。また、片頭痛痛²⁾や顎関節痛³⁾との関連性を報告する文献や書籍も見られます。
頭部前方位姿勢の特徴
頭部の前方突出は、上位頸椎が伸展し下位頸椎が屈曲する³⁾動きになります(図1)。
図1 頭部の前方突出に伴う頸椎運動
つまり、頭部前方位姿勢では上位頸椎は伸展位、下位頸椎は屈曲位となります。
頭部前方位姿勢で上位頸椎が伸展位で維持されることで、後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)(図2)は短縮⁴⁾しやすく、大後頭神経の絞扼によって頭痛を誘発する⁵⁾と考えられています。
図2 後頭下筋群の解剖
6)7)より画像引用
頭部前方位姿勢のマッスルインバランス(上位交差性症候群)
頭部前方位姿勢は、ヤンダ(Janda)の提唱により上位交差性症候群⁸⁾⁹⁾と呼ばれます。
上位交差性症候群は、後上方の僧帽筋上部繊維と前下方の大胸筋の緊張、前上方の頸最長筋などの頸屈筋群(深層)と後下方にある肩甲骨下部を安定化させる僧帽筋中部・下部繊維、前鋸筋の筋力低下により生じる⁸⁾とされています(図3)。
図3 上部交差性症候群のマッスルインバランス
頭部前方位姿勢の臨床評価
頭部前方位姿勢の臨床評価は、矢状面における耳垂から床面への垂直線と肩峰から床面への垂直線でされることが多いです。耳垂が肩峰に対して前方に位置する場合に頭部前方位と判断されます(図4)。
図4 頭部前方位姿勢の臨床評価
ただし、上記の評価法は、肩甲骨アライメントの影響を受ける点に注意が必要です。
例えば、肩甲骨が前方に変位している場合は、耳垂と肩峰の垂直線間距離が短くなることから、頭部前方位姿勢を見落とす可能性が挙げられます。
実際に、頭部前方位姿勢と巻き肩(肩甲骨前傾・外転位)は同時にみられる場合がある¹⁰⁾と調査でも報告されています。
これを踏まえて、信頼性が示され¹¹⁾ていてかつ臨床でも簡便に評価しやすい頭蓋脊椎角(craniovertebral angle:以下CVA)も把握しておきましょう。
頭蓋脊椎角(CVA)とは、第7頸椎棘突起を通る水平線と第7頸椎棘突起から耳珠を通る線が成す角度¹²⁾です(図5)。正常なCVAは49.9度¹³⁾とされています。頭位が前方に位置するほど、CVAは小さくなります。
図5 頭蓋脊椎角(CVA)
14)より画像引用一部日本語改変
実際の臨床では、ゴニオメーターを使ってCVAを測定することができます(図6)。
図6 ゴニオメーターによるCVAの測定風景
15)より画像引用
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参考引用文献一覧
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2)Monika, Ms, et al. "Relationship between forward head posture and headache related disability in migraine." Romanian Journal of Neurology 21.2 (2022).
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5)村木孝行 :肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション.株式会社洋土社,2018.
6)谷田惣亮; 宇於崎孝. 頸椎スタビライゼーションエクササイズが重心動揺に与える影響. 保健医療技術学部論集, 2019, 13: 11-23.
7)坂井建雄,松村讓兒(監訳):プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 / 運動器系 第 3 版,医学 書院,東京,2016.
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