椎間板の構造と内圧
椎間板の構造
椎間板は、外側の強固な線維輪と内側の髄核、 隣接する椎体を強固に連結する硝子軟骨組織である軟骨終板で構成されます(図1)。
図1 椎間板の構造
1)より画像引用(右側)
荷重における椎間板の歪み
脊柱の前方を圧迫する(屈曲を模倣)と髄核は後方移動し、後方繊維輪に剪断ストレスが生じます²⁾。
脊柱の後方を圧迫する(伸展を模倣)と髄核は前方移動し、前方繊維輪に剪断ストレスが生じます²⁾。
図2 荷重における椎間板の歪み
2)より画像引用
脊柱屈曲に伴い腰椎椎間板ヘルニアが後方突出するメカニズムに関与する知見になります。
姿勢と椎間板内圧の関連
椎間板性腰痛では、椎間板内圧の上昇を伴う姿勢や動作で疼痛が誘発される場合があります。
脊柱屈曲位や荷物を持ち上げる動作は、椎間板内圧を上昇させます³⁾(図3)。
図3 姿勢と椎間板内圧の関連
3)より画像引用
また、腰椎生理的前弯位に比べ腰椎屈曲位では椎間板内圧が高まる⁴⁾と報告されています(図4)。
図4 腰椎アライメントと椎間板内圧の関連
4)より画像引用(右側グラフ)
実際の臨床では、立位よりも座位で疼痛が誘発されたり増強したりするケースがみられます。脊柱を丸めた座位前傾姿勢は直立位に比べて椎間板内圧が高いことが一つの要因として挙げられます。
椎間板性腰痛のメカニズム
正常椎間板では疼痛の原因にはならない⁵⁾とされています。
しかし、衝撃吸収能が低下した椎間板に大きな外力が加わることで繊維輪が損傷し、その修復過程で繊維輪内に血管および神経が入り込みます⁶⁾(図5)。
図5 慢性椎間板性腰痛と椎間板内部への神経侵入
6)より画像引用
神経が入り込んだ変性椎間板(図6)では、再度外力による損傷が生じることで激しい疼痛が発生します。
図6 椎間板の変性(L4/L5)
(変性椎間板は水分が減少しMRIで暗く描出される)
7)より画像引用
実際に、人体において椎間板の繊維輪最外層部には神経終末が存在することや、変性椎間板では繊維輪の内層部にも神経終末が存在した⁸⁾との報告がなされています。
椎間板性腰痛の特徴的な臨床所見
椎間板性腰痛では、椎間板内圧が上昇する前屈動作、くしゃみや咳、骨盤後傾位での座位で症状が増強するのが特徴⁵⁾です(図7)。
図7 椎間板性腰痛の特徴的な臨床所見
また椎間板性腰痛は、背部の深部に知覚される持続的な、鈍い、疼くような疼痛⁹⁾とされています。
椎間板性腰痛の評価ポイントとアプローチ
椎間板性腰痛の臨床における評価ポイントは以下の3つ挙げられます。
【椎間板性腰痛の評価ポイント】 ・動作パターンの修正(腰椎前彎・骨盤前傾誘導) ・下肢後面のタイトネス ・座位姿勢指導(腰椎生理的前弯位の保持) |
これに関連した実際の評価やアプローチの例を以下にご紹介します。
前屈動作時痛に対する治療的評価①
椎間板性腰痛が疑われる前屈動作時痛に対して、対象者の骨盤を評価者が徒手で前傾方向に誘導して再度前屈動作を行います(図8)。骨盤前傾誘導は口頭指示で、対象者自身に行ってもらうこともできます。
図8 前屈動作時痛に対する骨盤前傾誘導
この操作で動作時の腰部痛が減弱する場合は、骨盤前傾運動の制限による影響を示唆しています。
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