上腕骨内・外側上顆炎と肘関節の整形外科的テスト

肘関節痛を生じる2つの病態

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

上腕骨外側上顆炎は、上腕骨外側上顆に圧痛や運動時痛を生じる疾患です。好発年齢は30〜50歳代¹⁾で、発症率に男女差は示されていません。

上腕骨外側上顆に付着する手関節伸筋群の中でも、主な障害部位は短橈側手根伸筋とされています¹⁾²⁾(図1)。ただし、難治例や重症例では、輪状靭帯、滑膜ひだ、関節包など硬化した複合体が存在する²⁾と報告されています。これは組織の変性と修復を慢性的に繰り返すことで瘢痕化したものと考えられています。

図1 上腕骨外側上顆炎の疼痛部位

痛みを起こす原因動作には、回内作業、持ち上げ動作、強く握る作業の繰り返しの関与¹⁾が挙げられています。

痛みの発生メカニズムとして、小指・環指(尺側)グリップが行えないことによる橈側優位の筋活動(橈側グリップ)橈骨の前方偏位(橈骨後方可動性低下)肩甲胸郭関節の安定性・可動性低下³⁾などが挙げられています。

職業別の罹患率は、PC(デスクワーク)が32%、次いで重量物運搬が15%と多く、スポーツ別では、テニスが32%、ついでゴルフが30%と多くの割合を占めています²⁾(図2)。

図2 上腕骨外側上顆炎の職業別罹患率(a)とスポーツ別罹患率(b)
2)より画像引用

肘関節外側の疼痛には、神経根症状や橈骨神経障害の可能性も挙げられるため、病態の鑑別が求められます。

上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)

上腕骨内側上顆炎は、上腕骨内側上顆に圧痛や運動時痛を生じる疾患です。

前腕を回内しつつ急速に手関節を掌屈する運動によって、内側上顆部に疼痛が生じる⁴⁾とされています。

野球の投球動作によって生じる肘関節内側部痛は、内側型投球障害肘とも呼ばれます(図3)。主に加速期における外反ストレスによって、肘内側支持組織の伸長ストレスが原因⁵⁾とされています。

図3 野球肘の分類

肘関節の整形外科的テスト

上腕骨外側上顆炎に対する疼痛誘発テスト

【Thomsenテスト、chairテスト、中指伸展テスト(図4)】

図4 上腕骨外側上顆炎に対する各疼痛誘発テスト
6)より画像引用

Thomsenテストは、検査側の肘関節伸展、前腕回内位とし、手関節背屈抵抗運動を行います。抵抗下手関節伸展テスト⁷⁾とも呼ばれます。

Chairテスト*は、検査側の肘関節伸展、前腕回内位で椅子を持ち上げます。

中指伸展テストは、検査側の肘関節伸展、前腕回内位で中指に伸展抵抗運動を行います。これは、第3中指骨底に停止する短橈側手根伸筋の収縮時痛を誘発しています。

いずれのテストにおいても、肘外側部または前腕にかけて疼痛が誘発されたら陽性となります。

✳︎実際の臨床では、Chairテストを応用して、肘関節伸展・前腕回内位で500mLや2Lのペットボトル(または重錘など)を把持したり、手関節背屈運動を行うことで、どの程度の負荷で疼痛が出現するのかをより詳細に評価することができます。疼痛の経過(変化)を追う意味でも有効となります。

腕頭関節・滑膜ヒダに対する疼痛誘発テスト

【fringe impingement test】⁸⁾

検査方法
 対象者の検査側上肢の肘関節屈曲かつ前腕回内位とします。検査者はそこから他動的に肘関節を強制伸展します。
判断基準
 腕橈関節部に疼痛が誘発されたら陽性です。
結果の解釈
 
前腕回内位とすることで腕橈関節の後方部に接触圧が増大し、滑膜ヒダの嵌入に伴って疼痛が誘発されると考えられています。

肘内側部に対する疼痛誘発テスト

【外反ストレステスト】⁸⁾⁹⁾¹⁰⁾¹¹⁾

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