足関節底背屈の運動学
脛腓関節(腓骨)の運動¹⁾²⁾³⁾⁴⁾⁵⁾
足関節背屈時に、腓骨の外果は外方変位(脛腓関節の開大)、後上方滑り(挙上)、外旋*します(図1)。この時、腓骨頭は前上方に変位します。
図1 足関節背屈時の腓骨運動
足関節底屈時に、腓骨の外果は内方変位(脛腓関節の閉鎖)、下降、内旋*します(図2)。この時、腓骨頭は後下方に変位します。
図2 足関節底屈時の腓骨運動
✳︎足関節底背屈に伴う腓骨の内外旋には、個体差があります。
これに関連し、距骨滑車が果間関節窩にはまりこみはじめる関節の角度は底屈27.5±2.3°で、距骨滑車の外側部が外果関節面と接し、下脛腓関節を外側方に押し広げながら関節をロックしていく²⁾と報告されています(図3)。
図3 距骨のロック角度
(A;底屈位、B;底屈27.5±2.3°(ロックはじめ)、C;背屈位(完全ロック))
2)より画像引用
距骨の運動⁶⁾
足関節背屈時に、距骨は後方に滑りながら前方に転がります(図4)。
足関節底屈時に、距骨は前方に滑りながら後方に転がります(図4)。
図4 足関節底背屈時の距骨運動
6)を参考に作図
日常生活に必要な足関節背屈可動域
足関節背屈の参考可動域は0〜20°⁷⁾とされています。
椅子座位膝関節屈曲90°位での足関節自動背屈可動域が10°未満のものは全例でしゃがみ込み動作が不可能、20°以上のものは全例でしゃがみ込み動作が可能であった⁸⁾と報告されています(図5)。
図5 足関節背屈可動域としゃがみ込み動作可・不可の関係
歩行においては、TSt(踵離地〜対側下肢接地)で背屈可動域10°⁹⁾¹⁰⁾と最も大きな角度が必要とされています。
テーピング固定下(足関節可動域制限下)の歩行では、自然歩行に比べて踵着地時の爪先高、股関節角度範囲、膝関節角度範囲、足関節角度範囲に有意な変化を認め¹¹⁾、股関節戦略が優位となる可能性が考えられています。
また、足関節背屈 0°および10° 制限時には、歩行時の最大足底圧部位が足趾部から前足部へ移行した¹²⁾と報告されています。
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参考・引用文献一覧
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2)壇順司. 足関節の機能解剖-人体解剖から紐解く足関節の機能. 理学療法学, 2013, 40.4: 326-330.
3)Beumer, Annechien, et al. "Effects of ligament sectioning on the kinematics of the distal tibiofibular syndesmosis: a radiostereometric study of 10 cadaveric specimens based on presumed trauma mechanisms with suggestions for treatment." Acta orthopaedica 77.3 (2006): 531-540.
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11)柳川和優:足関節可動域の制限が歩行動作に及ぼす影響.広島体育学研究 42:1〜10,2016.
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