腹臥位での股関節伸展運動は大殿筋のMMTを測るだけのものではありません。
今回ご紹介したいお話はもしかしたら少しだけマニアックかもしれません。
ですが、きっと面白い。
これから、
『なぜ股関節伸展運動で仙腸関節の機能評価ができるのか?』
を順を追って説明していきます。
まず、はじめに知っておきたいことは、
大殿筋と対側の広背筋には、筋膜連結がある1)という事実です。
例えば、
左側の大殿筋は、胸腰筋膜後葉の浅層を介して右側の広背筋と繋がっています1,2)。
大殿筋と対側の広背筋の筋膜連結
1)より画像引用一部改変
そして、次に大事なことは、
大殿筋と対側の広背筋の筋膜連結が正常に働くと、仙腸関節の閉鎖力が保たれる3)ということです。
大殿筋と同側の広背筋の筋膜連鎖(後斜走系)による仙腸関節の閉鎖力
逆を言えば、この連結が正常に作動しないと、仙腸関節の閉鎖力は失われ、仙腸関節の不安定性に繋がるということです。
仙腸関節の不安定性は、荷重伝達の不効率化や非特異的腰痛の原因となります。
さて、ここまでを理解できると、
『腹臥位での股関節伸展運動で仙腸関節の機能評価ができる』の意味が何となくわかってくると思います。
では、具体的な評価手順を説明します。
股関節伸展運動を用いた仙腸関節機能評価のイメージ
①腹臥位で股関節伸展運動をしてもらいます。
②股関節を伸展した側のPSISが腹側へ垂直に移動しているか、また対側の広背筋がしっかりと収縮しているのかをそれぞれ触診で確認します。(正常の筋膜連鎖ではこの所見がみられます。)
③股関節を伸展した側のPSISが外側方向へ移動したり、同側の広背筋が優位に収縮している場合は、筋膜連鎖の機能低下があると判断します。
この評価はどんな場面で使えるかといいますと、、、
例えば、先ほど説明したような非特異的腰痛の原因として仙腸関節があやしいと考えたときです。(もちろんあやしむにも評価は必要です)
あとは応用編として、デュシェンヌ跛行を挙げておきます!
(デュシェンヌ跛行についてはこちらもぜひ合わせてご参照下さい)
歩行周期において、IC(初期接地)からLR(荷重応答期)に大殿筋は収縮しますよね?
このタイミングで、
同側の大殿筋→対側の広背筋の筋膜連鎖が正常に働くと、デュシェンヌ跛行のような形にはならないと思いませんか?
、、、
面白くないですか?笑
この面白さを共感してくれるヒトが一人でもいれば嬉しいです。
今後もっとつっこんだ記事も書いていきたいと思います。
情報は随時更新していきます。
参考・引用文献
1)VLEEMING, Andry, et al. The posterior layer of the thoracolumbar fascia. Spine, 1995, 20.7: 753-758.
2)竹井仁:人体の張力ネットワーク 膜・筋膜 最新知見と治療アプローチ.医歯薬出版株式会社,2015.
3)柿崎藤泰:胸郭運動システムの再建法 呼吸運動再構築理論に基づく評価と治療 第2版.株式会社ヒューマン・プレス,2017.
forPTの限定noteが大好評販売中!
毎月新作noteをお届けする読み放題プラン(定期購読)がオススメです。
ブログ記事の先行公開(パスワードあり)はこちら⏬⏬
歩行分析サロンへの入会はこちら⏬⏬
症例の歩行動画を通して動作分析スキルを極めたい方にオススメです。