骨盤荷重伝達障害の評価とアプローチまとめ①〜判定基準(片脚立位テスト、ASLRテスト)〜

骨盤荷重伝達障害とは

ある課題において要求されるアライメントやバイオメカニクス、もしくはコントロールが最適ではない状態を力の伝達不良(failed load transfer:FLT)¹⁾と呼びます。

「体重を乗せにくい」「下肢の筋力を発揮しにくい」ことを主訴とする機能異常は、骨盤荷重伝達障害(failed load transfer through the pelvis)²⁾によるものと考えられています。

上半身と下半身をつなぐ骨盤帯には、仙腸関節が存在します。この仙腸関節には、以下の2つの荷重伝達機能があります。

【仙腸関節の荷重伝達機能】³⁾
・上半身の重量を下肢に伝達する
・衝撃緩衝作用(主に踵接地時)

仙腸関節は荷重負荷や床半力を受けとり負荷を分散させたり、骨間靭帯によって緩衝作用を有する⁴⁾と考えられています。

骨盤帯の不安定性やマルアライメントなどによる骨盤荷重伝達障害は、出産後の仙腸関節痛や高齢者の歩行安定性を低下させる原因になると理解されています²⁾。

骨盤荷重伝達障害の改善は、「下肢の軽さ」「動きやすさ」といった主観的な変化だけでなく、腰痛に対する予防・改善や全身のパフォーマンス向上効果も期待されます。

骨盤荷重伝達障害の判断基準²⁾

骨盤荷重伝達障害の有無は、片脚立位テストおよびactive straight leg raise test:自動下肢伸展挙上テスト、以下ASLRテスト)によって判断されます。

片脚立位テスト

片脚立位テストは、両腕を組んだ状態で膝伸展位での片脚立位を行います(図1)。3秒程度の保持が困難である場合に陽性と判断します。

図1 片脚立位テスト

ASLRテスト

ASLRテストは、背臥位で自動下肢伸展挙上を20°程度行い評価します(図2)。片足ずつゆっくりと挙上します。下肢の重みや代償運動(骨盤後傾や後方回旋)に左右差がみられる場合に、これらが大きい方を骨盤荷重伝達障害と判定します。
検査者は、骨盤の代償運動がなく股関節の屈曲運動のみでしっかり出来ているか、その左右差をよく観察します。また、踵が床から離れるときの重さの主観的な左右差を聴取します。

図2 ASLRテスト

片脚立位テストとASLRテストの両方が陽性となる場合に骨盤荷重伝達障害と判定されます。

NEXT 骨盤荷重伝達障害の評価とアプローチまとめ②

https://forphysicaltherapist.com/3873/

参考・引用文献一覧
1)Diane Lee:骨盤帯 臨床の専門的技能とリサーチの統合 原著第4版.医歯薬出版株式会社,2013.
2)平沼憲治,他:コアセラピーの理論と実践.株式会社講談社,2011.
3)John Gibbons:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ,株式会社医道の日本社,2019.

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。 ログインは【こちら】. 新規会員登録は【こちら】