姿勢・アライメントの基準まとめ⑤〜大腿骨前捻角、膝蓋骨、下腿過外旋、距骨〜

大腿骨前捻角の臨床評価

大腿骨前捻角の臨床評価では、Craig’s Test(クレイグテスト)が広く使われています(図1)。

Craig's Testは、腹臥位にて大転子が側方に最も隆起する股関節内旋角度を測定します。正常値は、 約15〜20°¹⁾とされています。

図1 Craig Test(クレイグテスト)
2)より画像引用

一般に寛骨臼形成不全症の大腿骨は、前捻角の増大がみられる¹⁾とされています。

また寛骨臼蓋形成不全を伴う2次性の股関節症の多くは、骨盤を前傾させる代償によって大腿骨に対する寛骨臼蓋の被覆を増すことで股関節を安定させる³⁾戦略をとります。

そのため、股関節痛の臨床評価では、少なくとも骨盤帯のアライメント評価と統合して病態を捉えていくと良いでしょう。

膝関節のアライメント評価



膝関節の生理的外反角度は5°⁴⁾(大腿骨の内方傾斜、下腿は床面と垂直)とされています(図2)。

図2 膝関節の生理的外反角度

膝関節のアライメントでは、knee out - toe inknee in - toe outか、またその程度を臨床で評価する機会は多いです。

knee out - toe inの判断は、両大腿骨内側顆をつけた状態で両内果間距離が2横指以上⁴⁾離れているかで行います(図3)。

knee in - toe outの判断は、両足を揃えた状態で両大腿骨内側顆が2横指以上⁴⁾離れているかで行います(図3)。

図3 膝関節のアライメント評価基準

姿勢観察のみでもknee out - toe inかknee in - toe outの判断は可能ですが、重要なのは、アライメントの程度の変化、動き(動作や歩行など)の変化、そして症状(疼痛)の変化を捉えていくことになります。

膝蓋骨のアライメント評価

膝蓋骨は、膝関節中央に位置し、膝蓋骨尖と関節裂隙の高さが一致⁵⁾します(図4)。

図4 膝蓋骨のアライメント

膝蓋骨が外側偏位している場合は、frog eye patella(カエルの目膝蓋骨)と呼ばれます。

膝蓋骨が内側偏位している場合は、squinting patella(やぶにらみ膝蓋骨)と呼ばれます(図5)。

図5 squinting patellaの例
6)より画像引用

また、膝蓋骨尖が関節裂隙より上位となる膝蓋骨上方偏位では、大腿四頭筋の過緊張や短縮による牽引力が影響していると考えられています(図6)。

図6 膝蓋骨に作用する主な誘導力
7)より画像引用

下腿過外旋の臨床評価

下腿過外旋は臨床で多くみられるアライメントの一つで、鵞足炎や半月板損傷を引き起こす要因となります。

【下腿過外旋の臨床評価手順】
背臥位で膝蓋骨位置と脛骨粗面の位置を比較し評価します(図7)。

図7 背臥位での下腿過外旋のアライメント評価

まずは、下肢を内外旋中間位に設定します(簡便に、膝蓋骨が真上(天井方向)を向くように設定します)。
その位置で、片方の手で膝蓋骨の内側および外側縁を把持します。もう片方の手は脛骨粗面の最も隆起している位置に触れておきます。この時、膝蓋骨の中央から遠位方向への長軸線に対して脛骨粗面がどれくらい外側に位置しているか(外旋の程度)を評価します。

下腿の過外旋が強い場合は、膝蓋骨外側縁よりも外側へ脛骨粗面が偏位していることもあります。両下肢で評価し、その程度の差を比較してみましょう。

また、アプローチ後に下腿過外旋のアライメントが修正されたかを判断するのにも有用です。

🔻膝蓋骨および脛骨粗面の触診は下記動画を参考にしてみてください🎥🔻

距骨のアライメント評価

距骨のアライメント評価は、回内足および回外足を判断する指標の一つとして有用です。

足部のアライメント評価指標としての有用性が示されているFoot Posture Index Six item version(以下:FPI-6)⁸⁾では、距骨頭の触診が評価項目として挙げられています。

【距骨アライメントの臨床評価手順(図8)】

図8 距骨の触診
8)より画像引用

足関節の前方から距骨頭を把持した際に、その内側および外側で同程度の圧で触知できる場合に、距骨のニュートラルポジションと判断されます。

距骨下関節が回内すると内側で、回外すると外側でより強い圧で触知することができます。つまり、回内足では、距骨頭の触知が内側でしやすい状態となっています。


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参考・引用文献一覧
1)建内宏重:股関節 協調と分散から捉える.株式会社ヒューマン・プレス,2020.
2)Chung, Chin Youb, et al. "Validity and reliability of measuring femoral anteversion and neck-shaft angle in patients with cerebral palsy." JBJS 92.5 (2010): 1195-1205.
3)永井聡,他:股関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く.株式会社メジカルビュー社 第1版,2018.
4)竹井仁:姿勢の教科書 上肢・下肢編.株式会社ナツメ社,2018.
5)赤坂清和. マッスルインバランスに対する評価と理学療法. 理学療法科学, 2007, 22.3: 311-317.
6)Teitge, Robert A. "Osteotomy in the treatment of patellofemoral instability." Techniques in knee surgery 5.1 (2006): 2.
7)NEUMANN, Donald A.: 筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2018.
8)OLEKSY, Ł., et al. Intrarater reliability of the Foot Posture Index (FPI-6) applied as a tool in foot assessment in children and adolescents. Medical Rehabilitation, 2010, 14.4: 10-20.