「股関節がつまる感じがします」
整形に携わる理学療法士なら、必ず聞いたことがあるのではないでしょうか。
放っておくと、femoroacetabular impingement(FAI)や変形性股関節症を引き起こす要因になりかねません。
股関節がつまる(股関節前方でのインピンジメント)原因には、股関節の後下方の関節包、靱帯、筋の伸張性低下1)が挙げられます。
これにより、大腿骨頭が前方へ変位し、インピンジメントを引き起こします。
今回は、講習会や海外論文をもとに、その原因となる筋肉について、整理していきます。
ずばり、大腿骨頭を前方へ変位させうる筋肉には、以下のものがあります。
- インナーマッスル
- 梨状筋
- 閉鎖筋ー腸腰筋
- 恥骨筋
- アウターマッスル
- 半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭
- (大腿筋膜張筋、中殿筋、大殿筋)
(肩関節と同様に股関節にもインナーマッスルとアウターマッスルがあります。)
インナーマッスル
梨状筋 梨状筋の過活動や短縮は大腿骨頭を前方に変位させます2)。これは多くの本や文献、勉強会でも言われており、定説となっています。
閉鎖筋ー腸腰筋 閉鎖筋と腸腰筋は互いの張力により骨頭を求心位に保ちます。そのため、どちらかが過活動(または弱化)を起こしたり、短縮することで、大腿骨頭が前方に変位します。
恥骨筋 恥骨筋が過活動や短縮を起こすことで、恥骨側へ牽引されるため、大腿骨頭を前方に引き出す因子となります。
アウターマッスル
半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭 ハムストリングスの中で、坐骨結節に付着する筋になります。大殿筋よりもハムストリングスの筋活動が優位になると、大腿骨頭を前方に変位させる可能性があります3)。
アウターマッスルについては、肩関節と同様の解釈で考えると理解しやすいと思います。 インナーの筋機能不全がある状態で、アウターが働くことでインピンジメントを引き起こす、あのイメージです。
そのため、まずは、インナーマッスルどうしの筋張力のバランスがしっかりとれているかが重要と言えます。
いかがでしょうか?
今回は、股関節のつまり感を引き起こす筋についてまとめましたが、骨盤のアライメントも大事な要因です。 これについては、またの機会に。
今回の内容に関してnoteのご紹介
今回の内容はforPTの限定note『股関節痛の理学療法〜骨頭求心位獲得のための評価とアプローチ〜』より一部内容を抜粋しています。 股関節痛に関する基礎知識や股関節インピンジメント症候群のアプローチ方法について学びたい方は読んでみてください。一部無料公開しています。
参考・引用文献一覧
1)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能.株式会社メジカルビュー社 第1版,2017.
2)永井聡,他:股関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く.株式会社メジカルビュー社 第1版,2018.
3)Miller, Eileen et.: A Movement system impairment approach to evaluation and treatment of a person with lumbar radiculopathy: A case report. Physiotherapy theory and practice, 2017, 33.3: 245-253.
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