膝関節のlateral thrust(外側動揺)のみかた
膝関節が内反して外側へ動揺する現象をlateral thrust(外側動揺)と呼びます。
変形性膝関節症(内反OA)の方によくみられる歩行の異常パターンの一つです。
lateral thrustは膝OAグレードの相関を認められたり、膝OA進行のリスク因子として挙げられています¹⁾。
歩行周期において、このlateral thrustが観察されるのはinitial contact(初期接地,以降IC)直後とloading response(荷重応答期,以降LR)以降の立脚期²⁾です。
どの相でlateral thrustが観察されるかによって、現象を引き起こす原因に以下のような違いがあると考えられています。
■IC直後にthrustがみられる場合
接地時に膝関節が十分に伸展していないことが原因としてあげられます。本来、IC時に膝関節は屈曲約5°となります。膝関節屈曲拘縮によりこの膝関節伸展角度が得られないようなケースでは、結果として膝関節に付着する靱帯の制動が得られず(膝関節の靱帯は完全伸展位で緊張が高まるため)、接地時に動揺しやすくなります。
■LR以降でlateral thrustがみられる場合
LRでlateral thrustが観察される場合は、大殿筋下部繊維、大内転筋、前脛骨筋、後脛骨筋などの筋力低下²⁾が原因としてあげられます。これらはLRで大腿骨と脛骨を前額面上で直立化させる筋肉であると考えられています。
LR〜立脚中期でlateral thrustが観察される場合は、トレンデレンブルグ様に骨盤の外側シフトしかつ遊脚側へ傾斜することで内反ストレスが増大すると考えられます。つまり、トレンデレンブルグ徴候の原因となる中殿筋の筋力低下などが影響している可能性があります。
この他、運動連鎖の視点からも、lateral thrustを引き起こす原因は挙げられます。
■運動連鎖の視点でみるlateral thrust
ICでの接地後、踵骨回内、距骨内旋・底屈、下腿内旋・前傾・内方傾斜をしながら、LR〜立脚中期にかけて足圧中心が外側から内側へと移動していきます。例えば脛骨過外旋を呈しているようなケースでは、この運動連鎖が正常に機能せず(十分に下腿内旋や内方傾斜が出ずに)lateral thrustを誘発してしまうことがあります。また、骨盤後傾は下行性運動連鎖によって膝関節内反を助長する因子としてあげられます(図1)。
図1 骨盤後傾に伴う下行性運動連鎖
@visiblebodyに感謝します
💡演習問題💡
Q.どちらかの下肢立脚期でlateral thrustが見られます。
左右どちらの下肢でしょうか?
(答えを見る前に動画を見ておきましょう!)
正解は・・・
右下肢でlateral thrustがみられます。
健常であっても、lateral thrustがみられることはあります(ちなみにこの症例は時々右膝関節に違和感あり)。何度も動画をチェックしてlateral thrustを見逃さないように目を鍛えてみてください。
参考・引用文献
1)林典雄:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 下肢 改訂第2版.株式会社メジカルビュー社,2014.
2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスの基づく臨床推論の実践.株式会社メジカルビュー社,2013.