胸郭出口症候群とは、腕神経叢、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が圧迫や牽引されることで起きる症状の総称です。
胸郭出口症候群には、症状を誘発している原因によって、牽引型と圧迫型、またはその両方が混在した混合型が存在します。
かつては、胸郭出口症候群は神経や血管の圧迫(圧迫型)により引き起こされていると考えられてきましたが、むしろ腕神経叢への牽引刺激(牽引型)が症状の発現に関連していると指摘されています1)。割合としては、混合型が最も多い2)と言われています。
今回は、この胸郭出口症候群の徒手検査法として有名だけど、なんとなく忘れがちな(そうでもない?)
5つのテストを以下にまとめますので、いつでも確認してみてください。
胸郭出口症候群の徒手検査法
【Morleyテスト】
検査方法
検査者は、検査側の斜角筋三角部に指腹で圧迫刺激を加えます。
判断基準
圧痛や検査側の上肢に放散痛、痺れが出現すれば陽性です。
結果の解釈
陽性の場合は斜角筋症候群が疑われます。左右差での比較やその他の検査とも統合して解釈しましょう。
【上肢の下方牽引テスト】
検査方法
検査者は、検査側の上肢を下方に牽引します。
判断基準
検査側の上肢に疼痛や痺れが出現すれば陽性です。
結果の解釈
陽性の場合は牽引型TOSが疑われます。肩甲骨挙上をした際に、症状の緩和や軽減がみられるかも合わせて評価しましょう。
【Adsonテスト】
検査方法
検査者は、対象者の両側橈骨動脈に触れます。対象者は頚部を検査側へ回旋させた状態で深呼吸を行います(画像では右側を検査)。
判断基準
橈骨動脈の拍動に変動(消失または減弱)があれば陽性です。
結果の解釈
陽性の場合は斜角筋症候群が疑われます。斜角筋三角部を狭小させ、かつ深呼吸をすることで斜角筋の筋緊張を高めています。血流低下に伴う意識障害のリスクに十分注意して行いましょう。
【Wrightテスト】
検査方法
検査者は、対象者の両肩関節を外転・外旋90°かつ肘関節90°屈曲位から水平伸展を行い橈骨動脈に触れます。
判断基準
橈骨動脈の拍動に変動(消失または減弱)があれば陽性です。
結果の解釈3)
陽性の場合は肋鎖症候群が疑われます。Wrightテストでは、肋鎖間隙が5mm以下となり狭小します。小胸筋による圧迫は著相ではないとされています。
【Edenテスト】
検査方法
検査者は、対象者の両肩関節を伸展させ上肢を下方へ牽引します。その位置で橈骨動脈の脈拍に触れます。
判断基準
橈骨動脈の拍動に変動(消失または減弱)があれば陽性です。
結果の解釈⁸⁾
陽性の場合は肋鎖症候群が疑われます。Edenテストでは、肋鎖間隙が4mm以下となり狭小します。
デスクワークをされている方で、胸郭出口症候群の方は臨床で本当に多くみられます。
頸椎椎間板ヘルニアや上肢の絞扼性神経障害を合併していることも少なくないため、胸郭出口だけでなく神経経路に沿って評価・アプローチしていく必要があります。
情報は随時更新していきます。
参考・引用文献
1)赤羽良和:肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編,株式会社運動と医学の出版社,2019.
2)林典雄:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹 改訂第2版.株式会社メディカルビュー社,2014.
3)今釜哲男, et al. 胸郭出口症候群の脈管テストの機序について. 整形外科と災害外科, 1978, 27.4: 559-563.
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