大腿直筋の起始は3つあるのをご存じですか?
大腿直筋の起始は?
と聞かれて、
下前腸骨棘 と真っ先に答える方は多いと思います。
しかし、それだけではありません。
基礎運動学や解剖の教科書をよくよくみると、
下前腸骨棘および寛骨臼の上縁1)2) と記載があります。
この寛骨臼の上縁に付着する線維が、
反回頭(または屈曲頭、reflect head)
と呼ばれるものになります。
実は、この反回頭のほかにも、第3の起始があるのをご存じでしょうか?
それが、
third head と呼ばれる線維になります。
この線維の起始は、なんと 小殿筋 なんです!
この事実は、2006年にR.S. Tubbsら3)によって報告されています。
大腿直筋のthird head
3)より画像引用 一部改変
例えば、、、
股関節前方のインピンジメントの原因の一つとして、大腿直筋の過緊張や短縮が挙げられます4)。
この場合に治療で行うのが、大腿直筋のストレッチですが、
理学療法士なら、この3つの線維の各走行を考慮したアプローチをしていきたいものです。
そこで今回は、
大腿直筋における3つの起始を考慮したストレッチ方法 をご紹介していきます!
それではさっそく、、、
- 直頭(direct head)
- 反回頭(reflect head)
- third head
各線維のストレッチ方法を順にご紹介します。
・直頭
下前腸骨棘から起始する線維です。
股関節屈曲0°における直頭の走行
6)より画像引用 一部改変
ストレッチ方法5)
腹臥位で股関節中間位(屈伸、内外転、内外旋0°)とし、膝関節屈曲方向へ伸張します。骨盤の後方回旋や同側の股関節屈曲、寛骨の前傾といった代償動作を坐骨結節部で徒手的に固定し防ぎます。腸骨で固定すると、腰椎前彎を増強させ、伸展型腰痛を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
・反回頭
寛骨臼の上縁から起始する線維です。股関節屈曲90°位で筋腹に対して直線上になります。
股関節屈曲90°における反回頭の走行
6)より画像引用 一部改変
ストレッチ方法4)
背臥位で股関節90°位(内外転、内外旋0°)とし、膝関節を深屈曲させます。これだけでは大腿直筋に十分な伸張が得られないため、反復性等尺性収縮(Ⅰb抑制)を利用してリラクゼーションを図ります。膝関節屈曲制限や膝関節痛がみられる場合には、疼痛を誘発、増悪させる恐れがあるため注意が必要です。
・third head
大転子の前外側面から起始する線維で、小殿筋の腱と腸骨大腿靱帯に付着します。
ストレッチ方法5)
小殿筋に対するストレッチを行います。治療側下肢を上にした側臥位で、対象者には、対側(下側)の下肢を屈曲位で両手で抱え込み、骨盤後傾位で固定してもらいます。セラピストは治療側下肢を膝関節伸展位とし、股関節伸展、内転、外旋方向へ伸張します。そこからさらに、膝関節屈曲方向への伸張操作を加えることでthird headに対するストレッチを行います。この手技では、大腿筋膜張筋および腸脛靭帯への伸張も加わりますが、筋連結の観点からthird headへのストレッチ効果が期待できます。
小殿筋のストレッチを利用した大腿直筋のthird headに対するアプローチ例
いかがでしょうか?
解剖学を深く理解し、筋繊維の走行を考慮することでストレッチの質を高めることが出来ます。
理学療法士の腕の見せ所ではないでしょうか?
情報は随時更新していきます。
参考・引用文献
1)中村隆一:基礎運動学 第6版.医歯薬株式会社,2011.
2)監訳 坂井建雄,松村讓兒:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版,株式会社医学書院,2019.
3)TUBBS, R. S., et al:Does a third head of the rectus femoris muscle exist?.Folia morphologica,65(4),377-380,2006.
4)熊谷匡晃:股関節拘縮の評価と運動療法.株式会社運動と医学の出版社,2019.
5)林典雄:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 下肢・体幹.株式会社メディカルビュー社,2019.
6)江玉睦明,他:大腿直筋の筋・腱膜構造の特徴 ―肉ばなれ発生部位との関連について―.厚生連医誌 第21巻 1号,34-37,2012.
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