デュシェンヌ徴候の原因

🔻新・臨床WEBサービス「forPT ONLINE」無料体験実施中!🔻

デュシェンヌ徴候の原因いくつあげられますか?

破行の一つとして有名なデュシェンヌ徴候ですが、臨床で遭遇した時にいくつの可能性を挙げられますか?

 

そもそもデュシェンヌ兆候とは、単脚支持側へ体幹および骨盤が傾斜する現象を言います。

一般には、股関節外転筋群の筋力低下の代償動作と捉えられることが多いですが、原因はそれだけではないことを多くのセラピストが経験しています。

 

そこで今回は、頭の引き出しに入れておきたいデュシェンヌ兆候を引き起こす原因を列挙していきます。

さらにデュシェンヌ兆候の特徴やトレンデレンブルグ徴候との違いについても触れていきます。

 

デュシェンヌ徴候の機能解剖学および運動学的な原因

デュシェンヌ徴候の機能解剖学および運動学的な原因には以下が挙げられます。

デュシェンヌ徴候の機能解剖学および運動学的な原因

・股関節外転筋群の筋力低下1,2)
股関節内転制限2)
・腸脛靱帯など股関節外側を構成する組織の拘縮1)
・体幹上部の側弯による異常姿勢1)
・立脚肢の短縮1)
・上肢で歩行補助具を使用1)
・足圧中心の外方化3)
・仙腸関節障害3)

従来は、原因として中殿筋の筋力低下に着目されることがほとんどでしたが、近年では、小殿筋の重要性についても述べられています。

小殿筋は、片脚立位において、中殿筋や大腿筋膜張筋に比べて有意に高い筋活動を示すと報告3)されています。また、小殿筋は大腿骨頚部と平行の筋繊維走行をしていることから、大腿骨頭を求心位に保つうえで重要な役割を果たします。

デュシェンヌ兆候は、中臀筋の筋力低下だけでなく、小殿筋の活動不全によって骨頭求心位を保てないことの代償として生じている可能性も考慮しておきましょう。

また、昨今の研究では、筋力低下だけでなく、可動域制限によってデュシェンヌ徴候が生じることも明らかになっています。

具体的には、股関節内転可動域が5°以下のケース全例で破行が出現したとの報告2,4)があります。デュシェンヌ徴候との強い関連も示されています。

筋力低下を補うための体幹側屈と股関節内転制限によって生じる体幹側屈では、同じデュシェンヌ徴候でも意味合いが変わり、アプローチ方法も異なります

 

つまり、デュシェンヌ徴候では、股関節外転筋群の筋力低下だけでなく、短縮による股関節内転制限も最低限同時に評価しておくのがよいでしょう。

その他の原因因子についても、相互に関係し合っている可能性もあるため、頭の片隅に入れておきましょう。

 

デュシェンヌ徴候とトレンデレンブルグ徴候の違い

デュシェンヌ徴候とトレンデレンブルグ徴候はどちらも異常破行であり、機能不全を代償する動作として現れます。

では、その違いはなんでしょうか?

デュシェンヌ徴候とトレンデレンブルグ徴候の明らかな違いは、寛骨臼の荷重面積の大きさです。

デュシェンヌ徴候では、股関節中間位または外転位での荷重となることで、臼蓋の荷重面積は比較的大きく股関節の安定性が保たれます

一方、トレンデレンブルグ徴候では、股関節内転位での荷重となることで、臼蓋の荷重面積は小さく大腿骨頭の外方への剪断力が生じやすくなります3)(下図参照)。

デュシェンヌ徴候とトレンデレンブルグ徴候
3)より画像引用

実際の臨床では、臼蓋形成不全があって股関節痛を伴っているケースでは、同側のデュシェンヌ徴候を多くみる印象があります。

これは、臼蓋形成不全や股関節の不安定性を補うための代償動作としてデュシェンヌ徴候が生じていると考えられます。

 

いかがでしょうか?

運動連鎖の視点を含めると、足部の影響などまだまだ原因因子は挙げられると思います。

まずは、デュシェンヌ徴候≠中殿筋筋力低下をしっかりと認知して、臨床推論のための引き出しを増やしていきましょう。

 

デュシェンヌ兆候についてさらに知りたい方はこちらの記事も合わせて読んでみてください。

🔻新・臨床WEBサービス「forPT ONLINE」無料体験実施中!🔻

参考・引用文献
1)訳 月城慶一,他:監察による歩行分析.株式会社医学書院,2005.
2)熊谷匡晃:股関節拘縮の評価と運動療法 第1版.株式会社運動と医学の出版社,2019.
3)永井聡:股関節理学療法マネジメント.株式会社メディカルビュー社,2018.
 4)熊谷匡晃; 岸田敏嗣; 稲田均. 股関節内転制限および外転筋力が跛行に及ぼす影響について. In: 理学療法学 Supplement Vol. 39 Suppl. No. 2 (第 47 回日本理学療法学術大会 抄録集). 公益社団法人 日本理学療法士協会, 2012. p. Cd0839-Cd0839.