トレンデレンブルグ徴候
トレンデレンブルグ兆候とは、観察側の下肢立脚相において、対側の骨盤が下制する現象を呼びます。
立脚期にトレンデレンブルグ徴候がみられる歩行をトレンデレンブルグ跛行またはトレンデレンブルグ歩行といいます。
有名な異常歩行のひとつで、中殿筋の筋力低下によって生じると一般に言われています。
ですが、すでに臨床経験のある理学療法士は、中殿筋の筋力強化だけでは問題点の改善に繋がらないケースをあまりにも多くみているのではないでしょうか。
そこで今回は、頭の引き出しに入れておきたいトレンデレンブルグ兆候を引き起こす原因を列挙していきます。
トレンデレンブルグ徴候の機能解剖学および運動学的な原因
トレンデレンブルグ徴候の機能解剖学および運動学的な原因には以下が挙げられます。
トレンデレンブルグ徴候の機能解剖学および運動学的な原因
・股関節外転筋群の筋力低下1-4⁾
・股関節内転筋群の拘縮または痙縮(股関節外転可動域制限)1⁾
・大腿筋膜張筋の過緊張5⁾
・腰方形筋の過緊張5⁾
・上半身重心の対側への偏位4⁾
・同側寛骨の挙上かつ水平面上後方回旋アライメント4⁾
・足圧中心の外方および後方化4⁾
・足関節背屈制限4⁾
・距骨下関節回内可動域制限4⁾
・対側の下肢をICで床面に近づけるための意図的運動1⁾
トレンデレンブルグ徴候はあくまで現象であり、原因から引き起こされる結果です。
上記に挙げた原因は決して単独で起こるのではなく、互いに関連し合っています。
例えば、中殿筋の筋力低下が主な原因でトレンデレンブルグ徴候が起こっている場合は、大腿筋膜張筋および腸脛靭帯の張力を代償的に利用して下肢を支持します。それによって大腿筋膜張筋に過緊張を起こしているケースが臨床では多いです。
また、対側凸の側弯症によって上半身重心が対側へ偏位しているようなケースでは、いくら中殿筋をトレーニングしても問題点の根本的な解決にはなかなか繋がりません。側臥位での股関節外転トレーニングを進めてしまうと、対側凸の側弯を助長してしまう可能性もあります。
実際の臨床では、観察されるトレンデレンブルグ徴候がそもそも改善すべきものなのか、なぜそのトレンデレンブルグ徴候がみられるのか(原因)、疼痛や症状とどう関連しているのかなどを評価の過程で考えていきましょう。
いかがでしょうか?
トレンデレンブルグ≠中殿筋は知っているけども、実際他には何がある?というところでつまずいているセラピストの参考となりましたら幸いです。
情報は随時更新していきます。
今回の内容に関して『歩行分析の教科書』を紹介
今回の記事は、以下のnoteから一部内容を抜粋してご紹介しています。
歩行の基礎知識を定着させたい方は手に取ってみてください。
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参考・引用文献
1)月城慶一ら:観察による歩行分析 第1版.株式会社医学書院,2013.
2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践 第1版.株式会社メディカルビュー社,2015.
3)工藤慎太郎:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.株式会社医学書院,2017.
4)永井聡:股関節理学療法マネジメント.株式会社メディカルビュー社,2018.
5)荒木茂:マッスルインバランスの理学療法.株式会社運動と医学の出版社,2018.
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