筋膜の構造と機能

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皮膚・筋膜の層構造

皮膚や皮下組織および筋膜は層構造を呈しています(図1)。

図1 皮膚・筋膜の層構造

皮膚は、表皮と真皮から構成される身体全体の表面を覆う最大の器官です。
皮下組織は、疎性結合組織と皮下脂肪を含みます。しばしば浅筋膜(superficial fascia)と同義とされます。浅筋膜は、皮膚と深筋膜の間の滑走や熱に対する緩衝材としての役割³⁾があります。

深筋膜は、全ての筋群を覆う結合膜によって形成されます³⁾。脂肪組織はなく、関節周辺では、靭帯を補強する役割があります。

筋外膜は、それぞれの筋肉を包み込んでいます。筋紡錘とゴルジ腱器官の間にある張力作用に直接関与しています。また、筋間中隔や腱膜と腱として深筋膜と結びつきます³⁾。筋外膜は筋束を束ねるだけでなく隣接筋の張力を伝える役割があると報告⁴⁾されています。

筋周膜は、いくつかの筋繊維が集まった筋束を覆う筋膜です。筋周膜は、筋の作用する長さ以上に伸長された状況下では高張力剛性を示し、張力の大きな力を伝達する¹⁾とされています。

筋内膜は、3つの異なった構造があります。その役割は、筋束内の力の伝達を調整し、繊維を統一組織内に保っておくために、隣接繊維としっかりと接合します¹⁾。

筋膜とは

筋膜(muscle fasciae)とは、筋組織に結びついている軟部結合組織を呼びます¹⁾。
一般には、浅筋膜(superficial fascia)および皮下組織(hypodermis、subcutaneous)を含めて筋膜と呼ばれることが多いです。実際に、頸部の後頸筋や顔面の表情筋のように、浅筋膜に筋繊維が存在する²⁾構造もあります。

広義で使われている筋膜という言葉は、第1回国際筋膜研究学術大会(2007)でFindley & Schleipによって提案されたFascia(膜、人体に広がっている結合組織系の軟部組織成分)¹⁾という用語が妥当ではないかとされています。

筋・筋膜の力伝達

筋肉の収縮によって発生した力の伝達は、直接隣接した2つの筋間(共同筋)の伝達筋外組織(結合組織、fascia)の伝達の2つの経路がある¹⁾とされています。

実際に、筋張力が自身の腱以外に伝達されること隣接する筋との相対的位置変化が筋張力に影響を与えること¹⁾⁵⁾が報告されています。またラットの研究では、下腿前方コンパートメントの筋膜を切除により長趾伸筋の筋力が約10%低下したとの報告⁶⁾など見受けられます。

これらの知見を踏まえ、臨床評価では、筋単独ではなく、少なくとも隣接(連結)する筋やそれを覆う皮膚・筋膜の緊張状態などを目的に合わせて評価しておきたいところです。

参考・引用文献一覧
1)竹井仁 監訳:人体の張力ネットワーク 膜・筋膜ー最新治験と治療アプローチ.医歯薬出版株式会社,2015.
2)多田信平:頭頸部の筋膜解剖.耳鼻咽喉科展望,1998,41.4: 411-421.
3)竹井仁 訳:筋膜マニュピレーション 理論編ー筋骨格系疼痛治療ー.医歯薬出版株式会社,2011.
4)石井禎基, et al. 筋膜による筋間連結の機能的役割-ウシガエル膝伸筋を用いた研究. 理学療法学, 2013, 40.1: 16-23.
5)Huijing, Peter A., Huub Maas, and Guus C. Baan. "Compartmental fasciotomy and isolating a muscle from neighboring muscles interfere with myofascial force transmission within the rat anterior crural compartment." Journal of morphology 256.3 (2003): 306-321.