大腿の筋肉(触診あり)
外側広筋
起始:大腿骨下部の前面、大腿骨大転子、殿筋粗面
停止:膝蓋靭帯を経て脛骨粗面、外側顆
作用:膝関節の伸展
支配神経:大腿神経
外側広筋の斜走繊維は、膝蓋骨を外方へ牽引しつつ大腿二頭筋、腸脛靱帯とともに下腿内旋方向に対するスタビライザーとして作用する¹⁾とされています。
大腿直筋
起始:下前腸骨棘と寛骨臼上縁
停止:膝蓋骨底と膝蓋靭帯を経て脛骨粗面
作用:膝関節の伸展、股関節の屈曲
支配神経:大腿神経
大腿四頭筋拘縮例でみられるいわゆる尻上がり現象は、大腿直筋の拘縮をみる検査¹⁾とされています。
中間広筋
起始:大腿骨体の前面
停止:膝蓋骨底と膝蓋靭帯を経て脛骨粗面
作用:膝関節の伸展
支配神経:大腿神経
中間広筋の最も深部からは膝関節筋と呼ばれる繊維群が起始し、膝蓋上包に停止し、膝関節伸展時に挟み込みを防止している¹⁾とされています。
膝関節筋
起始:大腿骨下部の前面、脛骨粗面、膝蓋上包
停止:脛骨粗面
作用:膝関節の伸展、関節包の巻き込み防止
支配神経:大腿神経
内側広筋
起始:大腿骨の転子間線と殿筋粗面と粗線の内側唇
停止:膝蓋骨底と膝蓋靭帯を経て脛骨粗面
作用:膝関節の伸展
支配神経:大腿神経
膝関節伸展不全(extension lag)と内側広筋の筋活動とは強い関係性を持っている¹⁾とされています。
臨床上散見される内側広筋の萎縮は、膝関節伸展不全や膝蓋骨亜脱臼、亜脱臼障害の要因の一つ²⁾として挙げられています。
縫工筋
起始:上前腸骨棘
停止:脛骨内側面の上部
作用:股関節の外転、外旋および屈曲、膝関節の屈曲
支配神経:大腿神経
外閉鎖筋
起始:閉鎖孔縁と閉鎖膜
停止:大腿骨の転子窩
作用:股関節の外旋、寛骨臼における大腿骨頭の固定
支配神経:閉鎖神経
外閉鎖筋は、股関節中間位および90°屈曲位の双方において大腿骨軸とほぼ直行するように走行し股関節屈曲位での内旋制動として働く³⁾とされています。
恥骨筋
起始:恥骨上枝
停止:大腿骨の恥骨筋線
作用:股関節の内転と屈曲
支配神経:大腿神経、閉鎖神経
股関節前方不安定性に起因する筋痛として、腸腰筋と恥骨筋が原因となっていることがほとんどである¹⁾とされています。
大内転筋
起始:
腱性部: 坐骨結節、筋性部: 恥骨下枝、坐骨枝
停止:粗線の内側唇と大腿骨内側上顆
作用:股関節の内転と屈曲、股関節の伸展(腱性部)
支配神経:脛骨神経、閉鎖神経
股関節屈曲位での外転強制では、大内転筋腱性部での肉離れが生じやすい¹⁾とされています。
短内転筋
起始:恥骨体と恥骨下枝
停止:大腿骨粗線の近位部
作用:股関節の内転、股関節の屈曲、伸展(屈曲80°以上位)
支配神経:閉鎖神経
大腿二頭筋
起始:
長頭: 坐骨結節
短頭: 大腿骨の粗線と外側顆上線
停止:腓骨頭の外側面
作用:膝関節の屈曲と外旋、股関節の伸展
支配神経:脛骨神経(長頭)、総腓骨神経(短頭)
大腿二頭筋の停止腱の一部は、外側側副靭帯を内·外側より覆いながら腓骨頭へと向かい、間接的に膝関節の内反を制動する¹⁾とされています。
半腱様筋
起始:坐骨結節
停止:脛骨内側面の上部
作用:膝関節の屈曲、大腿の伸展
支配神経:脛骨神経
半膜様筋
起始:坐骨結節
停止:脛骨内側頼の後部
作用:膝関節の屈曲、大腿の伸展
支配神経:脛骨神経
半膜様筋は、膝関節屈曲時の内側半月板や後方関節包の挟み込みを防止し、円滑な運動を誘導しています¹⁾。
薄筋
起始:恥骨体と恥骨下枝
停止:脛骨内側面の上部
作用:股関節の内転と屈曲、膝関節の屈曲と内旋
支配神経:閉鎖神経
長内転筋
起始:恥骨上枝と恥骨結節前面
停止:大腿骨の粗線の中3分の1
作用:股関節の内転、屈曲、伸展(屈曲80°以上位)
支配神経:閉鎖神経
長内転筋は、屈曲60°を境に屈曲·伸展作用が逆転する¹⁾とされています。
参考·引用文献一覧
1)林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢·体幹 改訂第2版.株式会社メジカルビュー社,2012.
2)林典雄, et al. "内側広筋における筋線維角の特徴." 理学療法学26.7 (1999): 289-293.
3)熊谷匡晃:股関節拘縮の評価と運動療法 第1版.株式会社運動と医学の出版社,2019.
4)H.Netter:ネッター解剖学アトラス 原著第7版.株式会社南江堂,2022.
5)坂井建雄,松村讓兒(監訳):プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 / 運動器系 第 3 版,医学 書院,東京,2016.
6)F.H.マティーニ,他:カラー人体解剖学 構造と機能:ミクロからマクロまで.西村書店,2003.