扁平足の臨床評価と運動療法

扁平足の臨床評価

母趾伸展テスト

母趾伸展テストは、足部のウィンドラス機構が機能しているかを評価するテストです。

ウィンドラス機構とは、中足趾節関節(MTP関節)の背屈に伴って足底腱膜の張力が高まり、内側縦アーチが挙上する現象¹⁾をいいます(図1)。

図1 ウィンドラス機構

歩行においては、立脚後期(TSt)にウィンドラス機構が働きます。第1列底屈、踵骨の前方牽引、距骨下関節回外を引き起こし、後足部と中足部の安定性に作用します²⁾。これによって蹴り出し時の推進力を生みます³⁾⁴⁾。

母趾伸展テスト方法は、対象者は安静立位となり、検査者は対象者の母趾MTP関節を他動的に背屈させます。

母趾MTP関節他動背屈によって、すぐに内側縦アーチの挙上が認められる場合はintact(機能低下なし)と判定します。しかし、他動背屈から少し遅れて内側縦アーチが挙上する場合はlimited(機能低下あり)、内側縦アーチの挙上が起こらない場合はabsent(機能していない)と判定します⁵⁾⁶⁾(図2)。

図2 母趾伸展テスト
(A→B:ウィンドラス機構が機能している人のテスト前後
C→D:ウィンドラス機構が機能していない人のテスト前後)
6)より画像引用
 

ウィンドラス機構の機能低下や機能していない場合は、足部の静的アライメントが回内している(アーチ低下と中足部が広い)⁶⁾とされています。

🎥母趾伸展テスト

too many toes sign

too many toes signは、荷重位での後脛骨筋・腱の機能評価⁵⁾として挙げられています。対象者の足部を後方から観察し、下腿の側方から足趾が見えるか、あるいは何本見えるかを確認する評価法です(図3)。

図3 too many toes sign

下腿の外側から1.5横指(小趾と環趾の1/2)以上が見えている場合を陽性とし、見える足趾の数が増えるにつれて、前足部の外転角度が大きいと判定⁷⁾されます。

また、後脛骨筋・腱の機能不全によって後足部が外がえし、中足部が外転している場合、外側の足趾が健側より多く見える⁵⁾とされています。

single heel raise test

single heel raise testは、荷重位での後脛骨筋・腱の機能評価⁵⁾として挙げられています。対象者は検査側片足立ちでheel raise(踵上げ)を行います。

正常の場合、踵の上昇に伴い後脛骨筋の機能によって距骨下関節は内返しします。後脛骨筋・腱の機能障害がある場合、距骨下関節は内返しせず、外返し位のままとなる⁵⁾とされています(図4)。

図4 single heel rise test

🎥single heel rise test

navicular drop test

navicular drop testは、内側縦アーチの評価指標の一つとして挙げられています。
対象者は立位となり、評価者は直定規を用いて、距骨下関節中間位から自然立位までの舟状骨高さの変化を測定します⁸⁾⁹⁾(図5)。

図5 navicular drop test
9)より画像引用

平均値は男性で5.3mm、女性で5.2mmとの報告¹⁰⁾があります。10mm以上の下降は過度の後足部回内と判定されます¹¹⁾。

ただし、この検査法の信頼性は十分とはいえない⁸⁾とされており、他の評価指標と統合しての解釈が必要になります。

🎥navicular drop test

🎥距骨の触診

Arch Height Index (AHI)

Arch height indexは、体表からアーチの高さを測定する評価方法で、足高と足長(踵骨から中足骨頭までの長さ)との比率で表されます⁵⁾(図6)。AHIは値が低いほどアーチが低下していることを意味します。

図6 Arch height index
12)より画像引用

日本人若年女性を対象とした調査では、10%荷重と90%荷重のAHIの基準値は 0.297~0.368、 0.275~0.341と報告¹²⁾されています。

feiss line

feiss line(フェイスライン)は、立位における内果下端と第1中足骨頭底部を結ぶ線です。feiss lineに対する舟状骨結節の落ち込みによって、内側縦アーチの高さを評価します。

feiss lineと床面との垂直線を三等分線、舟状骨結節がどの位置にあるのかを4段階で判定する²⁾方法が提案されています(図7)。

図7 feiss lineと臨床判断基準

扁平足の運動療法

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