肘関節の解剖学

肘関節の解剖学

肘関節の骨と関節

肘関節は、上腕骨橈骨尺骨の3つの骨で構成されます。

肘関節には、上腕骨と橈骨で構成される腕橈関節、上腕骨と尺骨との間で構成される腕尺関節、尺骨と橈骨の間で構成される近位橈尺関節(または上橈尺関節)があります(図1)。

図1 肘関節の骨と関節構造
(右上肢前面)

腕橈関節は、上腕骨小頭(球状)と橈骨頭窩(窪み)の間にあり球関節*となっています。ただし、橈骨の近位端は橈骨輪状靭帯が取り巻き¹⁾、実際に起こる関節運動は屈曲伸展とされています²⁾。

腕尺関節は、上腕骨滑車(凸)と尺骨滑車切痕(凹)の間にあり蝶番関節*(一軸性)となっています。関節運動は、屈曲伸展になります。
関節の適合性が高く、屈曲および伸展の最終域では、関節窩にはまり込むことで側方安定性が高くなります³⁾。

近位橈尺関節は、近位の橈骨と尺骨の間にあり車軸関節*となっています。前腕の回内・回外運動を担います。

✳︎補足:滑膜関節の種類(図2)

図2 滑膜関節の種類(+顆状関節もあり)
4)より画像引用一部改変

肘関節の靭帯

肘関節の靭帯は、内側と外側で分けられます。

肘関節の内側には、内側側副靱帯(前斜走繊維、横走繊維、後斜走繊維)が存在し、肘関節外反ストレスを制動します(図3)。

図3 肘関節内側を制動する靭帯(内側側副靱帯) 
(右上肢内側)

このうち、前斜走繊維がもっとも強靭で外反ストレスに対する制動力に寄与する¹⁾⁵⁾とされています。  

肘関節の外側には、外側側副靱帯(橈側側副靭帯、外側尺側側副靭帯)および橈骨輪状靭帯が存在し、肘関節内反ストレスを制動します(図4)。

図4 肘関節外側を制動する靭帯 
(右上肢外側)

このうち、特に外側尺側側副靭帯が後外側回旋不安定性に関与する¹⁾⁶⁾とされています。

肘関節の筋肉と作用

肘前面の筋肉(右上肢)

肘後面および外側面の筋肉(右上肢)

肘関節屈曲に作用する主要な筋肉には、上腕二頭筋上腕筋腕橈骨筋が挙げられます。

肘関節伸展に作用する主要な筋肉には、上腕三頭筋および肘筋が挙げられます。

前腕回内に作用する主要な筋肉には、円回内筋方形回内筋橈側手根屈筋、腕橈骨筋(回外位)が挙げられます。

前腕回外に作用する主要な筋肉には、回外筋上腕二頭筋腕橈骨筋(回内位)が挙げられます。

腕橈骨筋は、前腕回外位では回内作用前腕回内位では回外作用を有するのが特徴の筋肉です。

肘関節の関節包に付着する筋肉

【上腕筋と肘関節前方関節包の連続性】⁷⁾

図5 上腕筋の3つの筋束(右上肢外側および前面)
(LH:外側頭、IMH:中間頭、MH:内側頭、Del:三角筋、TB:上腕三頭筋)
7)より画像引用

上腕筋は、三角筋後部線維から連続する外側頭(LH)、三角筋の前方の集合腱に連続する中間頭(IMH)、上腕骨前面から起始する内側頭(MH)の3つの筋束があります(図5)。

このうち、深層を走る内側頭(MH)は肘関節の前方関節包に付着すると報告されています。

肘関節の他動屈曲によって内側頭とともに前方関節包が浮き上がる様子が観察されています(図6)。

図6 上腕筋内側頭と肘関節前方関節包の連続性(右上肢内側)
(✳︎:関節包、MH:内側頭、H:上腕骨、ME:内側上顆、O:肘頭、U:尺骨、T:尺骨結節)
7)より画像引用

これは、肘関節屈曲拘縮(伸展制限)の重要な知見として考えられています。

【上腕三頭筋内側頭と肘関節後方関節包の連続性】

図7 上腕三頭筋内側頭と肘関節後方関節包の連続性(右上肢内側)

上腕三頭筋内側頭は、肘関節後方関節包に直接付着する(近位端から1/4程度の幅)と報告⁸⁾⁹⁾されています(図7)。

肘関節屈曲に伴い、上腕三頭筋内側頭と後方関節包は緊張し、関節包に付着する筋をピンセットで牽引することで、関節包が引き出され張りを与えることが解剖体で観察されています。

これは、肘関節拘縮インピンジメントにおける重要な知見と考えられています。
上腕三頭筋内側頭の癒着・繊維化は肘伸展拘縮に大きな影響を及ぼすため、収縮やストレッチング、lift off操作などによって滑走させることは拘縮予防をする上で重要¹⁰⁾とされています。

この他、肘関節後外側関節包から一部起始する肘筋は、インピンジメントを防止する以外に、関節包を緊張させることで安定性に関与する⁹⁾と考えられています。

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参考・引用文献一覧
1)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能.株式会社メディカルビュー社,2017.
2)中村隆一:基礎運動学 第6版.医歯薬株式会社,2011.
3)工藤慎太郎:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.株式会社医学書院,2017.
4)Maciel, Anderson, Luciana Porcher Nedel, and CM Dal Sasso Freitas. "Anatomy-based joint models for virtual human skeletons." Proceedings of Computer Animation 2002 (CA 2002). IEEE, 2002.
5)Schwab, Gregory H., et al. "Biomechanics of elbow instability: the role of the medial collateral ligament." Clinical orthopaedics and related research 146 (1980): 42-52.
6)O'driscoll, S. W., D. F. Bell, and B. F. Morrey. "Posterolateral rotatory instability of the elbow." JBJS 73.3 (1991): 440-446.
7)山本昌樹, et al. 上腕筋に関する機能解剖学的考察—上腕筋 3 頭の形態的特徴と機能について—. 臨床解剖研究会記録 No. 13 2013. 2.
8)林典雄, et al. 24 上腕三頭筋内側頭と肘関節後方関節包との結合様式よりみた肘関節拘縮治療について. In: 理学療法学 Supplement Vol. 26 Suppl. No. 1 (第 34 回日本理学療法士学会 第 26 巻学会特別号). 公益社団法人 日本理学療法士協会, 1999. p. 12.
9)林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢 改訂第2版.株式会社メジカルビュー社,2011.