アキレス腱の機能解剖学

アキレス腱の機能解剖学



アキレス腱は、腓腹筋とヒラメ筋の共同腱です。捻れ構造がその特徴として挙げられます。

アキレス腱の捻れ構造

【アキレス腱の捻れ方向】
アキレス腱の捻れ¹⁾は、右側は反時計回りの方向に、左側は時計回りの方向にそれぞれみられます(図1)。

図1 アキレス腱の捻れ方向

【アキレス腱の捻れの程度】
捻れの程度は
、以下のように報告によってさまざまです。

アキレス腱は90°回転し、内側の繊維は後方へ、後方の繊維は側方へ回転します。

2)より引用

アキレス腱の平均的な捻れは、34.59±16.8°であり(図2)、大腿骨の捻れとの相関関係を認めた。

3)より引用

図2 アキレス腱の捻れ角度の計測
3)より画像引用

Van Gilら¹⁾⁴⁾は11〜65°の捻れであった、Smigielskiら¹⁾⁵⁾は30〜150°捻れているとも報告されています。

【アキレス腱の捻れ分類】¹⁾⁶⁾⁷⁾⁸⁾
アキレス腱の捻れは、Type1〜3に分類されています(図3、図4)。

図3 左アキレス腱の捩れ分類(後上方より観察)
(A;前側、P;後側、L:外側、M;内側、Sol;ヒラメ筋からの繊維、LG;腓腹筋外側頭からの繊維、MG;腓腹筋の内側頭からの繊維)
6)より画像引用


図4 左アキレス腱のタイプ別各繊維束の捻れ構造
(I-b、II-b、III-b;各繊維束の模式図、L;外側、M;内側、LG;腓腹筋外側頭からの筋膜、MG;腓腹筋内側頭からの筋膜、Sol;ヒラメ筋からの筋膜
赤線: 腓腹筋内側頭からの繊維束①〜⑤番
青線: 腓腹筋外側頭からの繊維束⑥〜⑨番
緑線:ヒラメ筋の繊維束⑩〜⑭番)
6)より画像引用

Type Ⅰ(least)は、ほとんどねじれていないタイプで、ヒラメ筋の付着するアキレス腱線維束のみが踵骨隆起の深層(踵骨側面)に付着します。Type Ⅰの出現率は24%⁶⁾、50%⁸⁾と報告されています。

Type Ⅱ(moderate)は、中等度ねじれタイプで腓腹筋外側頭とヒラメ筋の付着するアキレス線維束が踵骨隆起の深層(踵骨側面)に付着します。Type Ⅱの出現率は47%⁶⁾、67%⁸⁾と報告されています。

Type III(extreme)は、重度ねじれタイプで、腓腹筋外側頭の付着するアキレス腱線維束のみが踵骨隆起の深層(踵骨側面)に付着します。Type IIIの出現率は7%⁶⁾、9%⁸⁾と報告されています。

アキレス腱と足部アライメントの関連

アキレス腱と足部アライメントとの関連について、距骨下関節回内はアキレス腱の内側に大きな歪み(伸長ストレス)を生じさせ、距骨下関節回外はアキレス腱の外側に大きな歪み(伸長ストレス)を生じさせる⁹⁾と報告されています(図5)。

図5 距骨下関節の回内/回外に伴うアキレス腱の伸長ストレスの違い

これは、アキレス腱の疼痛部位と足部構造との関連性を評価する上でも重要と考えられます。

アキレス腱の血管分布

腱への血液供給源は、内的(筋腱接合部と腱付着部)外的(パラテノンや滑液鞘などの腱周囲の結合組織)の2種類に大別¹⁰⁾されます(図6)。

図6 アキレス腱への血管分布
(A;腱骨接合部(内的供給)、B;腱間膜(外的供給)、C;筋腱接合部)
11)より画像引用

アキレス腱の栄養血管は後脛骨動脈であり、パラテノンと呼ばれるアキレス腱を被膜する結合組織に覆われています(図7)。

図7 アキレス腱周囲の解剖(パラテノンの位置、上方より観察)
12)より画像引用日本語改変

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参考・引用文献一覧
1)江玉睦明. アキレス腱障害発生メカニズムの解剖学的検証. 日本基礎理学療法学雑誌, 2017, 20.2: 16-21.
2)Schepsis, Anthony A., Hugh Jones, and Andrew L. Haas. "Achilles tendon disorders in athletes." The American journal of sports medicine 30.2 (2002): 287-305.
3)Prosenz, Julian, et al. "The Twist of the Achilles Tendon–Associations of Torsions in the Lower Extremity." Clinical Anatomy 31.7 (2018): 1085-1091.
4)van Gils, Carl C., Ritchie H. Steed, and Jeffrey C. Page. "Torsion of the human Achilles tendon." The Journal of foot and ankle surgery 35.1 (1996): 41-48.
5)Śmigielski, Robert. "Management of partial tears of the gastro-soleus complex." Clinics in sports medicine 27.1 (2008): 219-229.
6)Edama, M., et al. "The twisted structure of the human A chilles tendon." Scandinavian journal of medicine & science in sports25.5 (2015): e497-e503.
7)工藤慎太郎:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.株式会社医学書院,2017.
8)Edama, Mutsuaki, et al. "Structure of the Achilles tendon at the insertion on the calcaneal tuberosity." Journal of anatomy 229.5 (2016): 610-614.
9)Bojsen-Møller, Jens, and S. Peter Magnusson. "Heterogeneous loading of the human Achilles tendon in vivo." Exercise and sport sciences reviews 43.4 (2015): 190-197.
10)熊井司,他;軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 組織特性に基づくアプローチ法の構築.株式会社メディカルビュー社,2021.
11)Carr, A. J., and S. H. Norris. "The blood supply of the calcaneal tendon." The Journal of bone and joint surgery. British volume71.1 (1989): 100-101.
12)Andersson, Gustav. Influences of paratendinous innervation and non-neuronal substance P in tendinopathy: studies on human tendon tissue and an experimental model of Achilles tendinopathy. Diss. Umeå university, 2010.