Thomasテスト変法の観察による運動分析
Thomasテスト変法では、検査側の下肢が浮いてくる方向を観察することで股関節伸展制限因子(筋原性)の予測が立てられます。これにより効率よく制限因子の鑑別評価を進めていくことができます。
具体的には、股関節屈曲作用のある筋肉の起始停止(水平断)に着目して運動の軌跡を観察します。
図1 Thomasテスト変法における下肢が浮く方向と制限因子(筋原性)の関連
図2 股関節屈曲作用のある筋肉(大腿部の水平断)
腸腰筋および大腿直筋の短縮で牽引される方向
腸腰筋および大腿直筋の短縮では、下肢は上方に浮きます(図3)。
図3 Thomasテスト変法における腸腰筋および大腿直筋の短縮に伴う下肢の牽引方向
大腿直筋の短縮が優位な場合には、下肢が上方に浮くのに合わせて膝関節伸展を伴います(図4)。
図4 大腿直筋の短縮が優位な場合の運動軌跡
大腿筋膜張筋の短縮で牽引される方向
大腿筋膜張筋の短縮では、下肢は外上方に牽引されかつ股関節内旋を伴います(図5)。
図5 Thomasテスト変法における腸腰筋および大腿筋膜張筋の短縮に伴う下肢の牽引方向
(腸脛靭帯の描出なし)
大腿筋膜張筋の短縮が疑われる場合は、oberテストを合わせて実施しましょう。
縫工筋の短縮で牽引される方向
縫工筋の短縮では、下肢は外上方に牽引されかつ股関節外旋・膝関節屈曲を伴います(図6)。
図6 Thomasテスト変法における縫工筋の短縮に伴う下肢の牽引方向
縫工筋の短縮に伴う牽引方向はややイメージがしずらいですが、縫工筋の作用(股関節屈曲/外転/外旋・膝関節屈曲)から理解できると良いでしょう。