ASLRの機能解剖学的調査
ASLRの機能解剖学的調査についてご紹介します。
ASLRにおける主観的な下肢の重さと下肢・体幹筋活動の関係
岡本ら¹⁾は、11名の男性健常者を対象とした調査で、ASLR時に重いと感じる下肢の反対側の外腹斜筋および中殿筋の活動性低下を報告しています(図1)。

図1 ASLRにおける主観的な下肢の重さと下肢・体幹筋活動の関係
1)を参考に画像作成
最適なASLRは股関節で屈曲し、骨盤は腰椎に対して水平にも側方にも、前傾も後傾もしない²⁾とされています。
対側の外腹斜筋および中殿筋は、筋繊維の走行や作用からASLR時の腰部・骨盤帯の安定化に寄与していると考えられます。それらの活動性低下は骨盤後傾・後方回旋などの代償動作に繋がっている可能性が示唆されます。
ASLRテストと腰椎安定性の関係
(ブレーシングの有用性)
Craigら³⁾は、腰痛や下肢痛のない平均26.9歳健常者を対象とした調査で、ASLRテストが腰椎回旋の安定性評価としての有用性を報告しています。さらに、腹壁筋全体を緊張させるブレーシングによってASLRテスト時の腰椎回旋が減少する(腰椎が安定する)とも報告しています(図2、3)。

図2 ASLRにおけるブレーシングの有無に腰椎回旋角度の比較
3)より画像引用一部日本語改変

図3 ASLRにおけるブレーシングの有用性
3)を参考に画像作成
ASLRにおける骨盤圧迫と腹横筋の関係(学会発表)
三島ら⁴⁾は、健常男子学生31名を対象とした調査で、左右腸骨稜前方から脊柱に向けて垂直に徒手的圧迫をした際に、 ASLRにおける腹横筋筋厚が増加する(圧迫しない条件または後方圧迫条件と比べて)と報告しています(図4)。

図4 ASLRにおける骨盤圧迫と腹横筋の関係
4)を参考に画像作成
ASLR時の骨盤圧迫は、臨床においてその後のアプローチにもつながる有用な評価指標となります。
ASLRテストと産後に腰痛を有する女性の機能障害との関係
Mensら⁵⁾は、産後に骨盤帯後方部痛のある女性200名を対象とした調査で、ALRテストの結果とケベック腰痛障害尺度(QBPDS)に有意な相関があると報告し、腰痛の重症度評価としての有用性を示しています。
ケベック腰痛障害尺度
The Quebec Back Pain Disability Scale
仙腸関節痛を有する女性のASLRテストにおける下肢・体幹筋活動

Shadmehrら⁶⁾は、仙腸関節痛を有する女性と健常女性それぞれ15名を対象とした調査で、仙腸関節痛を有する女性は、ASLRテストにおいて脊柱起立筋、大殿筋、大腿二頭筋、外腹斜筋の筋活動が有意に低下すると報告しています。さらにASLR開始時の長内転筋の活動が遅延するとも報告しています。
ASLRにおける骨盤ベルト着用時の筋活動
Huら⁷⁾は、20〜40代の健常女性20名を対象とした調査で、骨盤ベルト着用時には、ASLRにおける内・外腹斜筋および腹横筋の筋活動が低下し、対側の大腿二頭筋の活動が高まったと報告しています(図5)。

図5 ASLRにおける骨盤ベルトあり・なしでの筋活動の比較
7)より画像引用一部日本語改変
これは、骨盤ベルトが骨盤帯を安定するフォースクロージャーの役割を担っていると考察されています。