仙腸関節障害の理学療法評価
問診による疼痛部位の聴取
問診によって疼痛部位を聴取することで、仙腸関節痛の可能性をある程度予測することができます。
仙腸関節痛または仙腸関節障害由来の疼痛を生じるのは以下の黒またはグレーで囲った部位になります(図1)。
図1 仙腸関節由来の疼痛部位100例
1)より画像引用一部改変
特に、PSIS付近や仙腸関節面に沿った疼痛を訴える場合は、仙腸関節痛の可能性は高いです。
one finger test
one finger test
1)より画像引用
one finger testとは、対象者に一番痛いところを指さしてもらう検査です。この検査で、PSIS付近を指さした場合は、仙腸関節障害が強く疑われます。
疼痛部位が一点ではなくやや広範囲を示す場合であっても、図1で示した範囲内であれば仙腸関節障害の可能性を考慮しておきましょう。
仙腸関節のストレステスト
仙腸関節痛が疑われた場合には、次のようなストレステストを行います。
仙腸関節のストレステスト ・Gaensulen(ゲンスレン)テスト ・Patrick(パトリック)テスト ・Newton(ニュートン)テスト変法 |
これらのテストで疼痛が誘発される可能性は、Gaenslenテストで77%、Patrickテストで68%、Newton テスト変法で86%と報告¹⁾されています。
Gaensulen(ゲンスレン)テスト
2)より画像引用一部改変
検査方法 対象者は背臥位となり、非検査側下肢を抱え込み、検査者が検査側の大腿部を押し込みます。仙腸関節痛の出現で陽性とします。股関節痛との鑑別をするために、検査側骨盤を後傾方向へ固定下、非固定下で行います。 |
Patrick(パトリック)テスト
2)より画像引用一部改変
検査方法 対象者は背臥位となり、検査者が検査側下肢を組み、下方へ押すことで仙腸関節痛の有無を確認します。股関節痛との鑑別をするために、患側骨盤を固定下、非固定下で行います。(上記画像では非検査側固定となっている点に注意!) |
Newton(ニュートン)テスト変法
1)より画像引用
検査方法 対象者は腹臥位となり、検査者が検査側の仙腸関節部に圧迫を加え、疼痛の有無を確認します。 |
多くの著書や講習会では、GaenslenテストとPatrickテストの併用が推奨されています。
両テストを行う上で大事なことは、骨盤の固定と非固定での疼痛の有無をしっかり鑑別することです。
非固定下でのみ疼痛が出現する場合は、仙腸関節障害によって痛みが誘発されている可能性が高いです(骨盤を固定しても疼痛が見られる場合は股関節痛の可能性を考えます)。
ストレステストにおける関節面の圧中心および靱帯へのストレス³⁾ Patrickテストでは、仙骨尾部の関節面へ圧集中し、骨間仙腸靱帯へストレスがかかります。 |
仙腸関節障害の疼痛減弱テスト(重要!)
疼痛減弱テストは、疼痛の出現する動作や姿勢に対して行います。テストによって疼痛が減弱または消失するかどうかを評価し障害を捉えます。治療的評価でもあり、疼痛の減弱や消失がみられる場合は、その手技を反復して行うことで治療としても活用することができます。疼痛減弱テストの効果判定には、NRSを用いて疼痛の程度を前後比較する方法をおすすめします。
仙腸関節障害における疼痛減弱テストは、書籍や臨床家によって様々な提案がされています。
今回は、その中でも臨床において評価方法として確かに有用だと実感しているものを厳選して5つご紹介します。