仙腸関節の理学療法まとめ②〜仙腸関節の運動学と筋肉および靭帯による制御〜

仙腸関節の運動学

かつて「不動の関節」とも呼ばれた仙腸関節ですが、今では「動く」のがあたり前の解釈となっています。

仙腸関節の運動範囲は、2°~4°未満の回転運動1~2mmの並進運動¹⁾であり、非常に小さいのが特徴です。

この小さな動きのなかに、4つの運動があります。

仙腸関節の4つの運動
・ニューテーション
・カウンターニューテーション
・インフレア
・アウトフレア

ニューテーション

腸骨に対して仙骨が前傾(前方回旋)する運動をいいます。仙骨に対して、腸骨が後傾(後方回旋)した場合も同様です。仙骨および腸骨の運動は同時に起こる場合もあります。

カウンターニューテーション

腸骨に対して仙骨が後傾(後方回旋)する運動をいいます。仙骨に対して、腸骨が前傾(前方回旋)した場合も同様です。仙骨および腸骨の運動は同時に起こる場合もあります。

インフレア

水平面上で、寛骨が内方へ回旋する運動をいいます。この時、ASIS(上前腸骨棘)は内側へ、PSIS(上後腸骨棘)は外側へ偏位します。

アウトフレア

水平面上で、寛骨が外方へ回旋する運動をいいます。この時、ASIS(上前腸骨棘)は外側へ、PSIS(上後腸骨棘)は内側へ偏位します。

インフレアおよびアウトフレアは、単独の運動として起こることはないとされています。

またインフレアでは矢状面上での寛骨の前方回旋(前傾)、アウトフレアでは矢状面上での寛骨の後方回旋(後傾)との複合運動で生じると考えられています。

仙腸関節は能動的な運動ではなく、脊柱や肋骨、股関節の運動に伴って受動的にわずかに動きます。そのため体幹や股関節の可動域制限や不安定性は骨盤のマルアライメントを生じさせ、仙腸関節面や靱帯へのストレスを増加させる原因となります。仙腸関節の運動学は評価をするうえで、とても大切な知識なので運動学は必ず押さえておきましょう。

仙腸関節の運動は、6つある!?

多くの書籍で記載されるのがニューテーション、カウンターニューテーション、インフレア、アウトフレアの4つの運動です。ですが、これらの運動は矢状面および水平面の動きになります。実際の臨床では、仙腸関節の動きを三次元で捉えたほうがより多くのケースに対応できます。具体的には、前額面上でみる寛骨の下方回旋および上方回旋の動きも捉えます。下方回旋はいわゆる骨盤が開いたような状態、上方回旋は左右の腸骨稜は近づき恥骨結合が開いたような状態です。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。 ログインは【こちら】. 新規会員登録は【こちら】