矢状面における骨盤帯の姿勢評価方法
姿勢評価において、上半身と下半身をつなぐ骨盤帯に着目することは臨床上とても意義があります。
矢状面における姿勢観察で骨盤帯を見るポイントは以下の2点です。
矢状面における姿勢観察で骨盤帯を見るポイント 1.足部と骨盤の位置関係(変位)を見る 2.骨盤の前後傾(傾斜)を見る |
1.足部と骨盤の位置関係(変位)を見る
まずは足部に対して骨盤が前方にあるのか、後方にあるのかを見てみましょう。
矢状面における足部と骨盤帯の位置関係
足部に対して骨盤が前方(骨盤前方偏位)にある場合、股関節は伸展位となります。この場合は、股関節屈筋群(腸腰筋など)は伸張され、股関節伸筋群(大殿筋やハムストリングス)は短縮します。
足部に対して骨盤が後方(骨盤後方変位)にある場合、股関節は屈曲位となります。この場合は、股関節伸筋群は伸張され、股関節屈筋群は短縮します。
これは、変位によって骨盤と大腿骨の位置関係が変わることで生じています。
2.骨盤の前後傾(傾斜)を見る
骨盤の前後傾(傾斜)はニュートラルポジション(骨盤前後傾中間位)を基準として評価します。
骨盤のニュートラルポジションの基準指標は以下の2通り挙げられます。
骨盤のニュートラルポジションの基準指標 ①ASISがPSISに対し約2横指低い(約15°前方傾斜) ②ASISと恥骨結合をつなぐ線が床面に対して垂直 |
①ASISがPSISに対し約2横指低い(約15°前方傾斜)
ASISとPSISを触診し、高さの比較によって評価する方法です。対象者の骨盤の形状の個体差や、評価者の指幅の違いを考慮できないため、評価結果の信頼性はやや低いと考えられます。
②ASISと恥骨結合をつなぐ線が床面に対して垂直
ASISと恥骨結合を触診し、2つを結ぶ線が床面に対して垂直か評価する方法です。恥骨結合に対してASISが前方に位置すれば骨盤前傾位、恥骨結合に対してASISが後方に位置すれば骨盤後傾位と判断します。①に比べて評価しやすく、比較的信頼性は高いと考えられます。恥骨結合の触診に抵抗感がある場合は、対象者の手(指腹)で恥骨結合を示してもらうとよいです。
以上の基準指標を用いて骨盤の前後傾を評価します。
骨盤の前後傾と筋肉の関係
骨盤前傾位では股関節は屈曲位となります。この場合は、股関節伸筋群は伸張され、股関節屈筋群は短縮します。
骨盤後傾位では股関節は伸展位となります。この場合は、股関節屈筋群は伸張され、股関節伸筋群は短縮します。
実際の姿勢評価では、「1.変位」と「2.傾斜」の視点を合わせて観察していきます。