腰椎椎間板ヘルニアの病態と分類と吸収までの期間
[st-kaiwa1]椎間板ヘルニアがどんな病態かきちんと理解できていますか?[/st-kaiwa1]

腰椎椎間板ヘルニアがあり、腰痛や下肢痛、痺れ、感覚障害など様々な症状を抱えているケースは非常に多いです。

ですが、

MRI上に写るヘルニアと症状が必ずしも一致するとは限りません。

現に、腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第3版)においても、

MRI によって無症候性の椎間板ヘルニアが高頻度に存在する.健常者 200 名の腰 椎 MRI では,椎間板ヘルニアが L4/5 高位で 25%,L5/S 高位で 35%に認められた1)

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第3版)より引用

と紹介されています。

 

そこで今回は、

・そもそも腰椎椎間板ヘルニアってどんな病態?
・椎間板ヘルニアにはどんな種類があるの?


さらには、

・腰椎椎間板ヘルニアはどれくらいの期間で吸収されるものなの?

これらについて整理してご紹介します。

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腰椎椎間板ヘルニアの病態

画像4


腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の変性髄核が線維輪を穿破し、椎間板組織が脊柱管内に脱出、もしくは突出して神経の直接圧迫により腰痛や神経症状が出現したもの1)とされています。

ただし、前述したように実際の臨床では、画像所見で見られる椎間板の脱出と症状が一致しないことも少なくありません。

椎間板の脱出があっても無症候の場合もあれば、なかには、椎間板脱出の所見がみられてかつ腰痛があったとしても、その腰痛の原因が椎間板ヘルニアではないケースも存在します。

腰椎椎間板ヘルニアの有病率約1%で、好発高位L4/5(50.6%)L5/S(40.8%)1)と報告されています。

💡腰椎椎間板ヘルニアの病態については、以下の動画が非常にイメージしやすいのでチェックしてみてください。

 

腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類

腰椎椎間板ヘルニアは、1980年にAAOS(American Academy of Orthopaedic Surgeons)によって、ヘルニアの形態から以下の4つに分類されています(図1)。

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【腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類】1)
・髄核膨隆(intraspongy nuclear herniationまたは bulging type)
・髄核突出(protrusion type)
・髄核脱出(extrusion type)
・髄核分離(sequestration type)

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スクリーンショット 2021-06-16 22.58.16

図1 腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類
a.髄核膨隆 b.髄核突出 c.髄核脱出 d.髄核分離
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1176.pdf
より画像引用

髄核脱出はさらに、後縦靱帯の穿破していないsubligamentous extrusion type と後縦靱帯を穿破しているtransligamentous extrusion typeに分けられます。

髄核脱出と髄核分離は髄核膨隆や髄核突出と比較して有意に自然退縮*が起こりやすく、髄核分離は髄核脱出より完全消失しやすい1)とされています。
つまり、髄核が繊維輪から穿破している方が吸収されやすいと解釈することができます。
✳︎退縮とは、ヘルニアが縮小するまたは髄核が通常の容積に戻ることを意味します。

また、髄核脱出や髄核分離は髄核突出と比較して SLRテストの陽性率や障害神経根領域の運動・感覚障害がより高度である2)と報告されています。

腰椎椎間板ヘルニアの局在による分類

腰椎椎間板ヘルニアは、横断面における脱出部位によって以下の4つ分けられます(図2)。

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【腰椎椎間板ヘルニアの局在による分類】3)
・後正中型(Central type)
・後外側型(Subarticular type)
・椎間孔内外側型(Foraminal type)
・椎間孔外外側型(Extraforaminal type)

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スクリーンショット 2021-06-20 18.28.35

図2 腰椎椎間板ヘルニアの局在による分類
A.後正中型(Central type)
B.後外側型(Subarticular type)
C.椎間孔内外側型(Foraminal type)
D.椎間孔外外側型(Extraforaminal type)
4)より画像引用

発生頻度としては、後外側型が最も多い(70〜80%)とされています。

後正中型では、馬尾神経の圧迫を受けて、両側の下肢症状や歩行障害、排尿障害を生じる可能性があります。ただし、後縦靱帯が厚く存在する部位のため、ヘルニア発生頻度は後外側型に比べて多くはありません。

椎間孔内外側型は、ヘルニア全体の約5〜10%と発生頻度こそ多くはありませんが、後根神経節(感覚線維)が圧迫を受けて、強い痛み、坐骨神経痛、神経細胞の損傷などを引き起こす可能性があります。

腰椎椎間板ヘルニアの吸収期間

ヘルニアの吸収は46%が3ヶ月以内に観察された1)と報告されています。

また、韓国の研究では、505例中の486例(96.2%)が平均1年の経過観察でヘルニアの吸収が認められた1)との報告もあります。
そのため、治療においてはまずは保存的加療が第一選択となることが多いです。

さらに詳しく学ぶなら

今回の記事は、forPTの限定note『腰椎椎間板ヘルニアの理学療法〜動作パターンの改善と生活指導に着目したアプローチ〜』より一部内容を抜粋しています。


腰椎椎間板ヘルニアに対する実践的な理学療法までしっかり学びたい方は読んでみてください。

 

参考・引用文献
1)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第 3 版.
https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/cervical_spine_200915.pdf .最終閲覧日2021.6.26.
2)Jönsson, Bo, and Björn Strömqvist. "Clinical appearance of contained and noncontained lumbar disc herniation." Journal of spinal disorders 9.1 (1996): 32-38.
3)林典雄:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹 改訂第2版.株式会社メディカルビュー社,2014.
4)Chen, Chien-Min, et al. "Surgical outcomes of full endoscopic spinal surgery for lumbar disc herniation over a 10-year period: A retrospective study." Plos one 15.11 (2020): e0241494.

 

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