
足関節捻挫のあと、痛みは軽くなっているのに「足首が抜ける感じがする」「段差や切り返しで、また捻りそうになる」。こうした訴えに対して、どのような評価を組み立てているでしょうか。
慢性足関節不安定症(chronic ankle instability:CAI)では、靱帯の弛緩性に加え、可動性、感覚・知覚、筋機能、姿勢制御、動作、受傷への恐怖などが関わります。ただし、その組み合わせは患者ごとに異なります。前方引き出し検査の結果だけで、その人の不安定感を説明しきれるとは限りません。¹⁾²⁾
本記事では、足関節外側の機能解剖を確認したうえで、CAIの病態と臨床評価を整理します。構造と機能をつなぎ、「何を測ったのか」「その結果から、どこまで判断できるのか」を考えていきましょう。
足関節外側の機能解剖
距腿関節と距骨下関節
足関節の不安定感を考えるときは、距腿関節と距骨下関節の両方に目を向ける必要があります。距腿関節は脛骨・腓骨と距骨の関節、距骨下関節は距骨と踵骨の関節です。足部の内反・外反として観察される動きには、複数の関節で生じる運動が含まれます。³⁾
距骨下関節の運動を単一の軸で表すと、その軸は後下外側から前上内側へ斜めに走ります。このため、運動は前額面の傾きだけでは捉えられません。解剖図では単一の軸が示されますが、実際の運動には滑りや回旋が組み合わさります。見かけ上の「内反」が、どの関節の、どの方向の動きを反映しているかを意識することが、構造を解釈する出発点になります。³⁾
下図は、距骨下関節をA:外側、B:前方、C:上方から示しています。赤い棒は回転軸、青は骨間距踵靱帯(ITCL)です。³⁾

3)より画像引用
外側靱帯の機能
外側の安定性を担う代表的な靱帯は、前距腓靱帯(ATFL)、踵腓靱帯(CFL)、後距腓靱帯(PTFL)です。ATFLとPTFLは腓骨と距骨を、CFLは腓骨と踵骨をつなぎます。CFLは距腿関節と距骨下関節の双方の安定性を考えるうえで重要な構造です。³⁾⁴⁾

5)より画像引用
Colvilleらの献体研究では、ATFLのひずみは底屈・内旋・内反で、CFLは背屈・内反で増大し、PTFLは背屈・外旋で最大となりました。すべての外側靱帯が、同じ肢位で同じように働くわけではありません。⁶⁾
ここで注意したいのは、ひずみの増加を「その肢位で必ず損傷する」と読み替えないことです。献体実験の負荷条件と生体の受傷場面は異なります。臨床では、検査肢位を変えると、負荷される構造や得られる所見も変わると理解するとよいでしょう。

3、4、6)を参考に作成
ATFLの上束と下束
ATFLは一本の均一なひもとして描かれることがありますが、複数の線維束を持つ場合があります。日本人献体81足を調べたEdamaらの研究では、1束が33%、2束が57%、3束が10%でした。上束・下束に分けると機能を理解しやすい一方、すべての足関節が同じ形態ではありません。⁷⁾
Vegaらの32標本の解剖研究では、上束の付着部間距離は底屈で長く、背屈で短くなりました。一方、下束とCFLの付着部間距離は、調べた底背屈条件でほぼ一定でした。また、下束とCFLは弓状線維を介して連続しており、lateral fibulotalocalcaneal ligament complexとして記述されています。⁴⁾
ここで測定したのは付着部間の距離です。前述のひずみ測定とは測定対象や負荷条件が異なり、「距離がほぼ一定」という結果を「どの肢位でも張力が一定」と読み替えることはできません。
下図の解剖標本では、①がATFL上束、②が下束、③が下束とCFLを結ぶ弓状線維、④がCFLを示しています。外側から見ると、下束とCFLの連続性を確認できます。⁸⁾

8)より画像引用
この連続性は、見た目だけの問題ではありません。Cordierらは献体でATFL下束に張力を加えると、CFLへ力が伝わることを示しました。外側靱帯をそれぞれ独立した構造として覚えるだけでなく、複合体として力を受ける構造として捉える視点が得られます。ただし、この結果だけから特定の徒手療法や運動療法の効果を導くことはできません。⁹⁾
さらに、10献体を用いたロボット研究では、ATFL上束のみの切離でも、とくに底屈位で距骨の内旋と前方並進が増加しました。上束の障害が、大きな前方弛緩だけでは説明しにくい機械的変化に関わる可能性があります。もっとも、前方引き出し検査が陰性の患者に、上束損傷があると断定できるわけではありません。¹⁰⁾
距骨下関節の支持機構
距骨下関節には、頚靱帯(cervical ligament:CL)、骨間距踵靱帯(interosseous talocalcaneal ligament:ITCL)、前関節包靱帯(anterior capsular ligament:ACaL)などの固有靱帯があります。解剖学的研究では、これらの位置や形態が区別されており、ITCLとACaLを同一の構造として扱わないことも重要です。¹¹⁾
頚靱帯を前方から観察すると、内反位では縦方向に、外反位ではより横方向に緊張して走行します。下図のAが内反位、Bが外反位です。どちらの肢位でも緊張を保ちながら、距骨頚部の周囲を踵骨が動く際の運動誘導に関わります。³⁾

3)より画像引用
2026年に巻掲載された20足の献体研究では、CLとITCLの切離によって、背屈位での距骨・踵骨間の内反回転が増加しました。CFLの切離とは、影響が現れる関節や肢位が異なります。どの靱帯が安定性に寄与するかは、検査肢位と負荷のかけ方に左右されるのです。¹²⁾
このため、足関節外側の不安定感をATFLだけに集約するのは適切ではありません。一方、距骨下靱帯の徒手検査には、診断精度の根拠が十分でない部分も残っています。症状の部位、機械的所見、動作、必要に応じた画像所見を合わせて考える必要があります。¹³⁾
靱帯と感覚運動機能
靱帯は機械的な支持組織であると同時に、感覚入力に関係する神経終末を含みます。献体の免疫組織化学的研究では、足関節靱帯に自由神経終末やRuffini終末などが確認されています。ただし、神経終末が存在することと、目の前の患者に固有感覚障害があることは別の話です。¹⁴⁾
筋機能についても、外反筋力、反応開始までの時間、動作中の活動量は、それぞれ異なる指標です。CAIでは内反・外反筋力の低下を示す研究がある一方、歩行中の長腓骨筋活動が増加していた研究や、足部を急に内反方向へ傾ける刺激(内反方向への外乱)に対する腓骨筋の反応潜時に群差を認めなかった研究もあります。¹⁵⁾¹⁶⁾¹⁷⁾
下図の黒線はCAI群、青線は対照群、細線間は標準偏差を示します。右中央の長腓骨筋では、枠で示す立脚期の0〜15%・60〜76%でCAI群の活動が高くなっています。縦軸は静止立位の筋活動で正規化した値です。%MVCや筋力を表す値とは区別して読み取ります。¹⁶⁾

16)より画像引用
したがって、「CAIでは腓骨筋が弱く、反応が遅い」と一括りにするのではなく、どの課題で、どの機能が不足しているのかを確かめる必要があります。筋力が十分でも、着地時に不安定感が残ることはあり得ます。反対に、動作中の筋活動が大きいことだけを、良好な制御とみなすこともできません。
続きで学べること
この先では、CAIの病態に加え、前方引き出し検査・内反ストレス検査、荷重位背屈、SEBT、サイドホップテストの方法と、評価結果の解釈を図表とともに整理します。
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