
大腿直筋短縮によって生じる臨床的な問題

大腿直筋は、股関節と膝関節を跨ぐ二関節筋です。
股関節屈曲と膝関節伸展に作用し、歩行やスポーツ動作、立位姿勢の制御にも関与します。
一方で、大腿直筋は不良姿勢やスポーツ活動における反復的な膝伸展運動などによって、短縮しやすい筋でもあります。
大腿直筋が短縮すると、次のような問題につながる可能性があります。
骨盤前傾
短縮した大腿直筋によって骨盤が前方へ引かれ、骨盤前傾を助長する可能性があります。
腰椎前弯と腰痛
骨盤前傾に伴って腰椎前弯が増加し、腰痛の要因となる可能性があります。
膝関節屈曲制限
大腿直筋が十分に伸張されないことで、膝関節屈曲可動域が制限されます。
さらに重要なのが、大腿直筋短縮に伴う膝蓋骨への上方牽引です。
大腿直筋短縮による生体力学的な問題

膝関節が屈曲するとき、膝蓋骨は大腿骨滑車溝に沿って下方へ移動する必要があります。
しかし、大腿直筋が短縮していると、膝蓋骨に対して上方への牽引力が加わります。
この状態では、膝蓋骨が通常よりも高い位置に保持される可能性があります。
いわゆる高位膝蓋(Patella Alta)につながる力学的な状態です。
膝関節を屈曲しようとしても、膝蓋骨の下方滑りが十分に生じなければ、正常な屈曲運動が妨げられる可能性があります。
つまり、大腿直筋短縮による膝屈曲制限は、単純に「筋が硬い」という問題だけではありません。
大腿直筋の短縮
↓
膝蓋骨が上方へ牽引される
↓
膝蓋骨の下方滑りが制限される
↓
膝関節屈曲が制限される
という流れが考えられます。
大腿直筋短縮の評価
Modified Thomas Test

大腿直筋の柔軟性評価として、臨床で広く用いられているのがModified Thomas Testです。
被検者をベッド端に背臥位とし、一側の股関節と膝関節を胸部方向へ抱え込みます。
反対側の下肢をベッド端から下垂させ、膝関節屈曲角度を確認します。
研究では、大腿直筋短縮の基準として、
Modified Thomas Testにおける膝関節屈曲角度が80度未満
という条件が採用されました。
一方、80度以上の膝屈曲が得られる場合は、大腿直筋の柔軟性が保たれている状態として扱われています。
ただし、この評価では骨盤の代償に注意する必要があります。
大腿直筋が短縮している場合、膝関節を屈曲する代わりに骨盤が前傾する可能性があるためです。
そのため、研究では骨盤ベルトを使用し、骨盤の代償運動を抑えた状態で評価しています。