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小胸筋の機能解剖学
基礎解剖学

起始 (Origin):
第3〜5肋骨の前面(肋軟骨移行部付近)
停止 (Insertion):
肩甲骨の烏口突起 (Coracoid process) の内側縁・上下面
神経支配 (Innervation):
内側胸筋神経 (Medial pectoral nerve) (C8, T1)。
一部、外側胸筋神経からの枝(胸筋神経ワナ)も関与する。
作用 (Action):
肩甲骨に対して:
前傾 (Anterior tilt): 主要な作用。烏口突起を前下方に引き下げる。
下方回旋 (Downward rotation): 肩甲骨下角を内方へ引き寄せる。
肋骨に対して(肩甲骨固定時):
挙上 (Elevation): 深吸気時の補助筋として働く(呼吸補助筋)。
小胸筋のバイオメカニクスと臨床的意義
肩甲骨運動異常(Scapular Dyskinesis)との関連
システマティックレビューでは、健常者と比較して肩峰下インピンジメント症候群(SIS)患者において、肩甲骨の上方回旋と外旋が減少し、鎖骨の挙上と後退が増加していることが報告¹⁾されています。
肩峰下インピンジメント症候群(Subacromial Impingement Syndrome:SIS)で症状を有する群は、挙上60°地点で肩甲骨の上方回旋が減少、挙上120°で肩甲骨前傾が増加、肩甲骨内旋の増加(重錘負荷あり)、上部・下部僧帽筋の筋活動は増加、前鋸筋の筋活動は低下する²⁾ことが報告されています。
また、ヤンダ(Janda)の提唱による上位交差性症候群³⁾⁴⁾は、後上方の僧帽筋上部繊維と前下方の大胸筋や小胸筋の緊張、前上方の頸最長筋などの頸屈筋群(深層)と後下方にある肩甲骨下部を安定化させる僧帽筋中部・下部繊維、前鋸筋の筋力低下により生じる⁸⁾とされています(図1)。

図1 上位交差性症候群
肩峰下インピンジメント症候群(SIS)との関連
小胸筋の短縮と肩甲骨内旋位は相関する⁵⁾ことが示されています(図2)。

図2 肩甲骨内旋位と小胸筋の短縮
さらに小胸筋の短縮があると、挙上時の肩甲骨後傾が少なく、肩甲骨内旋が大きい⁶⁾ことが報告されています(図3)。これは、SIS患者と類似した肩甲骨運動パターンである⁶⁾とされます。

図3 小胸筋短縮例の肩関節挙上
胸郭出口症候群(TOS)との関連
胸郭出口症候群とは、腕神経叢、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が圧迫や牽引されることで起きる症状の総称であり、絞扼部位の一つとして小胸筋間隙部(小胸筋症候群)が挙げられます(図4)。

図4 小胸筋間隙部
小胸筋の肥厚や走行異常が腕神経叢や腋窩動静脈を圧迫する構造的要因となりうること⁷⁾が示されています(図5、6)。

図5 胸郭出口と小胸筋領域の解剖学的構造
7)より画像引用

図6 小胸筋間隙部(Pectoralis minor space)
7)より画像引用
特に腕を過外転させる肢位で小胸筋間隙部の圧迫が顕著になる⁸⁾ことが、TOSの病態生理として広く受け入れられています(図7)。

図7 Wright’s test
8)より画像引用
小胸筋の評価方法
臨床において小胸筋の長さを評価するには、客観的で信頼性のある測定方法が求められます。
小胸筋の長さ測定⁹⁾¹⁰⁾¹¹⁾
臨床における簡便性および信頼性の高い方法として、烏口突起内側下縁と第4肋骨胸骨端の下縁の距離を測定する方法があります(図8)。

図8 小胸筋の長さ測定(烏口突起内側下縁と第4肋骨胸骨端の下縁の距離)
10)より画像引用
1cm以上の変化がみられた場合、治療効果や身体変化による「真の変化」である可能性が高い¹⁰⁾とされます。
小胸筋長テスト(Pectoralis Minor Length Test)
小胸筋の筋長の代替的指標として、肩峰後方からベッドまでの垂直距離を測定する方法は、高い検者内信頼性を示しています¹²⁾(図9)。

図9 小胸筋長テスト(肩峰後方からベッドまでの垂直距離)
12)より画像引用
しかし、妥当性には疑問が残り、小胸筋の短縮を確実に示す指標とは言えない¹³⁾と指摘されています。
小胸筋へのアプローチ
エビデンスは、単一の介入よりも、ストレッチと運動療法を組み合わせた包括的なアプローチの有効性を示唆しています。
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