理学療法

脳の可塑性〜局所性変化について〜

学生さんや、若手の療法士に向けて
脳卒中リハビリテーション
(以下、脳卒中リハ)についての
情報発信をしている「やまもと」と申します。

自己紹介

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ルイ(Louis)さんが運営している《forPT》で、
ライターをさせていただいています。

👇前回の記事はこちら👇
脳画像を読む力がつくと臨床がかわる
〜すぐに実践できる脳画像診断のコツ〜初級編

今回のテーマは〜脳の可塑性〜です。

私自身、脳卒中リハを行う上で、
脳の機能が回復することを
あまり意識せずに介入していた時期がありました。

今思うと、
「骨折患者さんに、荷重のスケジュールを無視して介入していたのと同じでは?」と思うほど、
基本的なことが抜けていたと反省しています。

脳の機能回復について、
今回は、脳の可塑性に着目して
わかりやすくまとめてみました。

スライドや画像を挟みながら作成していますので、
気軽な気持ちで読み進んでくださいね。

では、はじめましょう(^^)/

脳の可塑性

脳卒中後に起こる急性期での機能回復(意識障害や運動麻痺の回復)は、脳の機能が回復しながら変化していきます
このことを、脳の可塑性といい、脳卒中リハビリテーションには欠かすことのできないキーワードです。

骨折したあとに骨のリモデリングが起こるように、ケガをしたときに傷口が治っていくように、脳卒中発症のあとには脳の可塑性が起こります。骨や傷が回復するように、脳も回復していくんですね。

脳の可塑性.001

上の図は、運動麻痺回復にあたっての神経の興奮性・神経伝達速度の向上を示しています。

特に急性期での神経の興奮性が重要で、1st stage recoveryに当てはまる急性期~3か月間は、残存している機能の興奮性を高める時期(上の図:青線)と言われています。
※矢印が下がっているのは、興奮が消失していくのを示しています。

その急性期に生じるといわれる脳の可塑性について、
脳内で起こっている回復のメカニズムを
確認していきましょう😄!


脳卒中で脳が損傷した後の回復メカニズムは、
大きく2つに分けることができます。

局所的変化と中枢神経系の再組織化です。


本日は、局所的変化である、以下の3つの脳の可塑性について触れてみたいと思います。

局所的変化

代表的なもので、
①脳浮腫の改善
②虚血性ペナンプラ(penumbra)の改善
③ディアスキシス(diaschsis)があります。

これらの脳の変化は、急性期と呼ばれる数日間~数か月の間に起こると言われています。

それぞれの現象について解説していきますね(^^)/

①脳浮腫について

損傷した脳組織の周辺で起こり、浮腫によって損傷していない領域が圧迫を受けることで、その領域が一時的な機能不全を起こすとされています。

脳浮腫の改善が得られることで、脳の神経機能が回復がみられ、その期間は2か月間ほど継続する。


脳浮腫は、脳組織の水分量が増加して、容量がふえている状態であるため、頭蓋内圧亢進の原因となります。たとえば、急性期でみられる、意識障害は、脳浮腫により脳幹が圧迫されることで出現しているとも考えることができます

脳浮腫に対しては、亢進した頭蓋内圧をさげることを目的に、抗浮腫薬が用いられることが多いとされています。

臨床では、
意識障害があっても、早期に抗浮腫薬が投与されることで、
脳浮腫の改善を期待することができます。
結果、意識レベルも回復していくかもな、
と予想することができますね。


『どのような治療薬が使われているのか』を気にしてみるといいかもしれませんね。

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意識障害は、Japan Coma Scaleで評価しましょう。

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Japan Coma Scaleについて
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

②虚血性ペナンブラについて

脳梗塞では、梗塞部位の周辺組織(虚血部)に生じる、壊死が起こらない程度の血流低下が起こり、ペナンプラ(penumbra)といいます。

機能的には障害を受けるが、
脳の組織自体はまだ死滅しておらず、
ごく少量であっても血流の増加により
回復が見込まれる領域
となります。


脳梗塞を発症すると、1分間に190万個の細胞が死滅する、との報告もあり、できる限り早くの治療(なかでもt-PA治療)が求められています。

日本のガイドラインでは、

発症から4.5時間以内に投与が可能な場合に限り、遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rt-PA)製剤の静脈内投与による血栓溶解療法が強く推奨されてる。


この治療は、血栓を溶解し、血流を再開させる作用があります。

rt-PAは組織プラスミノゲンアクチベーター(r-PA)の1つで、血栓上のプラスミノゲンを活性化してプラスミンへと変換し、血栓溶解を促す薬剤である。


tPA 治療

図引用:病気がみえるVol.7 第1版 
脳・神経 MEDICMEDIA P.80


要は、「血栓を溶かしてくれよ」と働きかけてくれる薬剤のことですね。笑

rt-PAが投与されることで閉塞した血管が再開通するようになります。

その結果、梗塞巣と正常の脳組織との間に位置している神経細胞が乏血状態から素早く回復していくことができるんですね。

rt-PA治療は、急性期治療の重要なターニングポイントともいわれています。

③ディアスキシスについて

『機能乖離』や『遠隔性機能障害』、『皮質間抑制』などとも呼ばれています。ここでは、ディアスキシス(diaschsis)で統一しますね。

呼び方が多いのは、ややこしいので、ひとつにまとめてほしいと思うのは、私だけでしょうか。笑

話を戻しますが、

ディアスキシスは、脳の損傷部位とは隣接していないが、神経線維により連結する遠隔の領域で、一時的な機能不全を起こすことをいいます。

神経の連絡線維については、町田志樹先生著の解剖学の本に詳しくまとめられています。

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たとえば、視床周辺が損傷した場合に、視床と神経で連結している頭頂葉の病変が出現することがあります。その場合は、半側空間無視や高次脳機能障害、言語障害などが起こったりします。

『多くの研究者によって左右の視床が機能的に等価でないことが報告されており、皮質の側頭ー頭頂葉に多くの投射線維連絡をもつ視床枕や、発生学的に新しい視床腹側核の言語機能における役割が重視されている』
引用:左視床出血患者に認めれた失語様症状について
中野明子、中島健二ら 失語症研究2(2),351-357.1982


ほかにも、小脳出血の方に、認知症の症状が現れることもあります。

理由は、小脳と前頭葉がネットワークで繋がっているためです。そのため、小脳が損傷を受けることで、ネットワークのある前頭葉の血流が低下してしまう現象です。

小脳損傷によって、起こりうる機能障害
◎遂行機能障害
◎言語機能
◎視空間認知機能
◎性格および行動変化
『上記の認知機能障害をまとめて、Cerebellar cognitive affective syndrome:CCASと呼ぶ新たな概念が提唱された』

参考および引用:小脳を中心としたテント下病変の高次脳機能
大沢愛子 前島伸一郎
高次脳機能研究 第28巻 第2号


ディアスキシスを起こしている領域は、一時的に停止している状態であり、本来は正常な組織です
。そのため、通常はゆっくりと改善していきます。

ここで介入する際の注意も必要です。

「早期離床が大切だ!」と、離床をすすめた結果、起立性低血圧が起こってしまうと仮定します。その場合、脳の血流が減り、脳の損傷を進めてしまう可能性もあります。

参考:起立性低血圧:河野律子ら:
昭和医会誌 第71巻 第 6 号〔 523-529 頁,2011 〕 


早期の離床を進めたことで、予後が不良になってしまうなんてことは避けたいですよね。担当のドクターと、血圧管理をどうするかは確認が必要ですね。

まとめ

今回は、脳の可塑性の中でも、局所過程についてまとめてみました。

脳の可塑性(局所過程)が起こる時期は、「数日間から数か月」と幅があると言われています。

脳の可塑性

表:脳の可塑性について 局所過程と脳の再組織化
引用:原寛美・吉尾雅春:脳卒中の理学療法の理論と技術
   MEDICAL VIEW P395表1をもとに作成


局所的変化が起こるのは、主には、急性期でのリハビリテーションです。急性期には、廃用の予防を図るために、早期の離床が求められます。

はじめの図でも触れましたが、

脳の可塑性.001

運動麻痺回復のステージで、はじめの3か月は、残存している皮質脊髄路の興奮性が高まる時期です。

この時に、生じるであろう、脳の可塑性(脳浮腫・ペナンプラ・ディアスキシスの改善)を知っておくことで、理学療法を提供するときのプラス材料になるのではないでしょうか。

今回の記事が、
(学生さんを中心に)実習や
(新人さんを中心に)臨床業務の、
一助となると幸いです(^^)/

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参考文献

・小脳を中心としたテント下病変の高次脳機能:大沢愛子 前島伸一郎:高次脳機能研究 第28巻 第2号
・左視床出血患者に認めれた失語様症状について:中野明子、中島健二ら:失語症研究2(2),351-357.1982
・脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション:原寛美:脳外誌.21巻.7号.2012年7号
・急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実際:原寛美:臨床神経2011:51:1059-1062
・起立性低血圧:河野律子ら:昭和医会誌 第71巻 第 6 号〔 523-529 頁,2011 〕 

書籍

・脳卒中の理学療法の理論と技術 第1版 
 監修:原寛美・吉尾雅春:MEDICAL VIEW2013
・脳卒中に対する標準的理学療法介入 
 何を考え、どう進めるか?
 潮見泰蔵 国際医療福祉大学教授:文光堂2007
・機能障害科学入門
 監修:千住秀明 編集:沖田実 松原貴子 森岡周 
 SHINRYOBUNKO2010
・PT・OTビジュアルテキスト専門基礎 
 解剖学 第1版 監修:坂井建雄 著:町田志樹  
 羊土社2018

今回は以上です。
ご覧いただきありがとうございました。

 

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