等尺性筋収縮後弛緩の理論と技術背景
筋の収縮様式には、運動要素からの分類¹⁾として、等尺性収縮、等張性収縮、等尺性収縮が挙げられます(図1)。
図1 運動要素からの分類
1)より画像引用
等尺性収縮後に、一部の筋紡錘は活動を持続したり、他の筋紡錘は一時的に活動が抑制される²⁾と報告されています(図2)。
図2 等尺性筋収縮後の筋紡錘の安静時活動
(A: 収縮後も持続的に活動が見られた筋紡錘の例
B: 筋収縮中に活動が増加し、収縮終了後に活動が停止した筋紡錘の例
90°:足関節角度、T.A. E.M.G:前脛骨筋活動、P.L:Ⅰa群繊維の活動)
2)より画像引用
随意収縮後のリラクセーションが筋の柔軟性に効果をもたらす神経生理学的機序として、ホールドリラックスとコントラクトリラックスにはⅠb抑制と反回抑制が、アゴニストリラックスには相反抑制が関与している³⁾と考えられています(各手技は後述する)。
また、筋伸張位での最大静止性収縮を行うホールドリラックスでは、筋腱移行部および腱の伸張量が大きく、より効果的に筋腱複合体のスティフネスを低下させる可能性が考えられています³⁾(図3)。
図3 ホールドリラックスにおける筋腱移行部の移動
3)より画像引用
筋収縮後弛緩を用いた手技(テクニック)で主なものには、等尺性収縮後の筋伸張法(Post Isometric Relaxation:PIR)、固有受容性神経筋促通法(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF)、マッスルエナジーテクニック(Muscle energy technique:MET)が挙げられます。
等尺性収縮後の筋伸張法(Post Isometric Relaxation:PIR)
等尺性収縮後の筋伸張法(Post Isometric Relaxation:PIR)は、Lewitらが1984年に論述した筋・筋膜性由来の疼痛に対する効果に関する報告⁴⁾が最初となり、PNFやMETと共通した起源を持つ⁵⁾とされています(図4)。
図4 PIRの実施風景
6)より画像引用
【PIR試行時の基本原則】⁵⁾
PIRをより効果的に施行するためには、下記原則に則る必要があるとされています。
【PIRの禁忌】
骨折、捻挫、筋断裂、腱断裂、腰痛症などの急性期、脳血管障害などの急性期は禁忌⁵⁾となるとされています。
固有受容性神経筋促通法(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF)
固有受容性神経筋促通法(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF)は、Maggie Knott(理学療法士)が創始者であり、「固有感覚器の刺激によって神経のメカニズムの反応を促進したり早めたりする方法」⁶⁾とされています。
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