運動制御に関わる脊髄反射ー伸張反射、相反抑制、反回抑制、自原抑制ー

運動制御に関わる脊髄反射

伸長反射

伸長反射(stretxh reflex)は、脊髄反射の一つで、筋の伸長によって誘発される反射的な筋の収縮¹⁾です。

伸長反射活動は、直立姿勢では抗重力筋の伸びによって発生することから姿勢反射(postural reflex)²⁾と呼ばれることもあります。

1924年にLiddelとSherringtonが、除脳ネコの脊髄の後根または前根を切断すると伸長反射が消失する(図1)ことを発見し、筋からの脊髄への感覚入力と筋への復路が必要である³⁾ことを報告したのが研究の始まり¹⁾²⁾とされます。

図1 除脳ネコの伸長反射
(破線:後根切断後の筋伸長に伴う伸長反射の減弱)
1)より画像引用

【伸長反射(stretch reflex)のメカニズム】

筋肉中の受容器である筋紡錘が、筋肉の伸びを感知します。
筋紡錘の信号は、Ⅰa群求心性繊維から脊髄を介し直接、同名筋(伸長された筋)と協働筋のα運動ニューロンに伝わり筋収縮が生じます(図2)。

図2 伸長反射の生理学的メカニズム
1)より画像引用

このとき、筋紡錘からの求心性神経は、抑制性介在ニューロン(inhibitory interneuron)を介して拮抗筋のα運動ニューロンに抑制性の信号を送ることで拮抗筋は弛緩します¹⁾。これは相反性神経支配(reciprocal innervation)¹⁾⁴⁾⁵⁾相反(性)抑制(reciprocal inhibition)⁶⁾⁷⁾⁸⁾と呼ばれます。

相反性神経支配(相反抑制)

相反性神経支配(相反抑制、Reciprocal Innervationまたはreciprocal inhibition)は、筋の伸長に対して、拮抗筋の収縮を抑制する反射⁹⁾です(図3)。

図3 相反性神経支配(相反抑制)
9)より画像引用

相反性神経支配という用語は、sherringtonによって1897年に名付けられた⁴⁾とされています。

相反性神経支配は、抑制性介在ニューロン(inhibitory interneuron)によって行われます。その神経回路には、①随意運動時の相反神経支配②皮膚刺激による屈筋反射時の相反神経支配③伸長反射時の相反神経支配の3つ⁴⁾が挙げられています(図4)。

図4 3種類の相反神経支配の回路図
(M:運動ニューロン、AーM:拮抗筋支配の運動ニューロン、
I:抑制性介在ニューロン、FーM:屈筋支配の運動ニューロン、
EーM:伸筋支配の運動ニューロン
+:興奮、ー:抑制)
4)より画像引用

①随意運動時の相反神経支配(図4のA)は、随意運動により、皮質脊髄路は同名筋の運動ニューロン(M)には興奮を、拮抗筋の運動ニューロン(AーM)には抑制性介在ニューロン(I)を介して抑制を及ぼしています(図5)。

図5 伸張反射回路と皮質脊髄路や他の下行路からの入力
1)より画像引用

②皮膚刺激による屈筋反射時の相反神経支配(図4のB)は、皮膚神経が屈筋の運動ニューロン(FーM)を興奮させ屈筋が収縮します。この時、伸筋の運動ニューロン(EーM)を抑制する抑制性介在ニューロン(I)にも信号を送り、伸筋を弛緩させます(図6)。

図6 屈曲反射
1)より画像引用

③伸長反射時の相反神経支配(図4のC)は、筋の伸張によりⅠa群求心性繊維は同名筋(ここでは伸筋)の運動ニューロン(EーM)に及び興奮させます(図7)。これにより同名筋は収縮し、伸びに拮抗します。同名筋の収縮が円滑に行われるため、Ⅰa群求心性繊維は抑制性介在ニューロン(I)を介して拮抗筋の運動ニューロン(ここでは屈筋)抑制し、拮抗筋が弛緩します。屈筋や伸筋が入れ替わっても同様の神経回路が成立します。

図7 伸張反射
1)より画像引用

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