膝関節内側側副靱帯(MCL)の解剖学と臨床所見

変形性膝関節症をみるなら必ず知っておきたい内側側副靱帯の解剖を一度整理しませんか?

 

内側側副靱帯(medial collateral ligament:以下MCL)は、

膝関節外反ストレス(伸張ストレス)によって疼痛が生じたり、変形性膝関節症(以下膝OA)の方では、膝関節伸展および屈曲の制限因子となることが臨床で多くみられます。

 

今回は、内側側副靱帯がそもそも膝関節においてどのような役割を担っているのか、また臨床ではどのような所見がみられるのかをまとめていきます。

 

MCLの解剖

MCLの解剖図
1)より画像引用一部改変


MCLは浅層深層に分けられます。

浅層はさらに、前縦走繊維(anterior oblique ligament:以下AOL)後斜靱帯(post oblique ligament:以下POL)に分けられます。

深層は、大腿骨側では半月大腿靱帯、脛骨側では半月脛骨靱帯とも呼ばれます。

 

MCL各繊維の起始停止

起始

大腿骨内側上顆

停止

浅層
AOL:脛骨内側顆の内側縁から後縁
POL:内側半月板および半膜様筋

深層
内側半月板中節および
脛骨関節面の直下

 

MCLの役割

MCLは膝関節の内側に広く存在し、外反および外旋を制動します。外反の制動力は、膝関節屈曲5°では57.4±3.5%、膝関節屈曲25°では78.2±3.7%を占める2)と言われています。

AOLは膝関節屈曲45~60°で直線上となり、それより伸展、屈曲すると緊張します。特に伸展10°以上、屈曲100°以上で緊張が高まります3)

POLは半膜様筋の収縮によって、内側半月板を引き出す機構に関連3)しています。

MCLの臨床所見

MCLが腫脹したり疼痛がみられる症例は、圧倒的に荷重時のニーイントゥーアウト(Knee in/tue out)のアライメントがみられます。

これによる膝関節外反ストレスによって痛めている方がとても多いです。歩行観察でもみられますが、特に階段の下り動作では確認されやすく疼痛を訴える例も多いです。

膝OA患者においては、膝関節の伸展制限および屈曲制限因子となっている事が多いです。膝OAでは膝関節内側が短縮位となり、MCLの伸張性や滑走性も低下していることがあります。この場合は、MCLのダイレクトストレッチや癒着剥離操作、関節運動を伴う滑走性改善を図ったりします。

 

いかがでしょうか?

 

膝疾患をみるうえで参考となりましたら幸いです。

情報は随時更新していきます。

 

参考・引用文献
1)坂井建雄,他監訳:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版,株式会社医学書院,2017.
2)GRIFFITH, Chad J., et al. Force measurements on the posterior oblique ligament and superficial medial collateral ligament proximal and distal divisions to applied loads. The American journal of sports medicine, 2009, 37.1: 140-148.
3)林典雄:膝関節拘縮の評価と運動療法.株式会社運動と医学の出版社,2020.
4)工藤慎太郎:運動器障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.株式会社医学書院,2018.

 

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